2007 Fiscal Year Annual Research Report
リベラリズムの再構成:ヒュームとスミスの道徳哲学の現代的意義に関する研究
Project/Area Number |
06J05917
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
島内 明文 Keio University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 道徳感情 / 道徳的評価 / 帰結 / 道徳的運 / 帰結主義 / 徳倫理 |
Research Abstract |
本年度は、ヒューム・スミス道徳哲学の全体像を把握し現代的意義を究明する作業の一環として、研究計画の第二年次の内容にあたる研究を実施した。すなわち、(1)古典的リベラリズムおよび現代政治哲学との比較検討を通じた、ヒュームとスミスにおける「第三のりベラリズム」の定式化、(2)現代の実践的諸課題に関する社会哲学的研究、である。 (1)については、道徳的運をめぐる現代倫理学の議論も参照しつつ、スミスにおける道徳的評価(刑罰をも含む広義の道徳的評価)と行為の帰結との関係を考察した。そしてスミスは、道徳的評価が予想される帰結、法的評価が現実の帰結に基づくという立場をとっており、これはある種の帰結主義と徳倫理を統合したものであることを明らかにした。この成果については、『イギリス哲学研究』(第31号、日本イギリス哲学会)に論文「アダム・スミスにおける道徳感情の不規則性」として公表した。また、徳の理論を中心にしてスミスとヒュームの道徳哲学の比較検討を進め、一定の成果が得られたが、これについては次年度以降に論文の投稿を予定している。 (2)については、公衆衛生や社会疫学をめぐる現代政治哲学の論争状況に関して、一定の知見が得られた。こうした研究成果の一部として、健康格差論の最重要文献(N. Daniels, B. Kennedy, and I. Kawachi, Is Inequality Bad for our Health, Beacon Press, 2000.)の翻訳に携わり、2008年中に勁草書房から刊行の予定である。
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Research Products
(1 results)