2006 Fiscal Year Annual Research Report
リベラリズムの再構成:ヒュームとスミスの道徳哲学の現代的意義に関する研究
Project/Area Number |
06J05917
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
島内 明文 慶應義塾大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | リベラリズム / 道徳哲学 / ヒューム / スミス / 正義 / 徳 / 道徳感情 |
Research Abstract |
本年度は、ヒューム・スミス道徳哲学の全体像を把握し、その現代的意義を究明するという課題の一環として、研究計画の第一年次の内容にあたる研究を実施した。すなわち、(1)ヒュームとスミスの正義論とその関連諸概念(立法、統治、自由、平等)の検討、(2)現代の実践的諸課題に関する社会哲学的研究、である。こうした研究は、主として受入研究者の柘植尚則助教授による演習への参加を通じて行なわれた。また、児玉聡(東京大学医学系研究科助手、医療倫理学)氏主催のベンサム研究会および政治哲学研究会への参加を通じても、ヒューム・スミスと功利主義の思想史的関係、現代政治哲学とその具体的な問題への適用可能性に関して、本研究に関連する有益な知見が得られた。 まず、(1)については、ヒューム正義論における人為的徳と自然的徳の区別を検討し、正義の徳と規則の関係がロールズのいう実践として捉えられることを明らかにしたうえで、徳の形成過程の究明を試みた。こうした研究成果の一部は、『倫理学年報』に論文として公表している。また、スミス道徳哲学の全体像を明らかにするために、刑罰を含む広義の道徳的評価と行為の帰結との関係を考察し、道徳的評価が意図の内在的帰結、法的評価が実際の帰結に基づくことを明らかにした。こうした研究成果の一部は、日本イギリス哲学会関東部会で報告を行ない、それをもとにした論文の投稿を次年度以降に予定している。 つぎに、(2)については、政治哲学研究会での報告・討論を通じて、グローバル・ジャスティス、多文化主義をめぐる論争状況に関して、一定の知見が得られた。こうした研究については、次年度以降、社会疫学や公共政策などのより具体的なテーマと関連づけて、さらに検討を進めることになるが、その中間的な成果を学会報告や論文の形で公表することを予定している。
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Research Products
(1 results)