2007 Fiscal Year Annual Research Report
ロマン主義としての脱構築:デリダにおける政治的なものと神話的なもの
Project/Area Number |
06J05924
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小森 謙一郎 Keio University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | デリダ / ブランショ / 神話的なもの |
Research Abstract |
本年度は、前年度の研究成果にもとづきつつ、コーラに代表される神話素を原理としたデリダの政治思想におけるロマン主義的な傾向を検証した。 近代哲学の根幹は理性にあり、理性こそが近代以降のあらゆる学問・科学の規範となっている。神話素を基礎とするデリダの思想はしばしばそうした体制に対する反動とみなされてきたが、理性主義の陥穽をいち早く批判したのはドイツ・ロマン派であった。そこでロマン派からデリダにいたるまでの思想史を神話的なものと政治的なものの相克という観点から検証した結果、近代ドイツ思想と現代フランス哲学を結ぶ重要な担い手としてモーリス・ブランショの名が浮上した。作家にして批評家であったブランショの思考は、現在までのところ必ずしも明らかになったとは言い難く、とりわけ神話的なものへの取り組みに関する問題については、ほとんど議論されないままにとどまっている。しかし、デリダの政治思想は神話的なものに対するブランショの取り組みに大きく触発されており、本年度の研究はその射程を検証することに重点を置いた。 具体的な成果としては、「火を返す-ブランショからデリダへ」という題目で学会発表を行なった。考察の対象として取り上げたのはブランショのデリダ論であるが、そこでブランショはフロイトの『モーセと一神教』を暗に斥けつつ、このテクストに少なからぬ意味を見出すデリダから一定の距離をとっている。その距離の取り方を詳細に分析した論文を現在執筆中であり、これは数ケ月後に雑誌論文として公表される予定である。この論考は従来のブランショ研究に一石を投じることになるだけでなく、デリダの政治思想の構えを理解する上でも役立つと思われる。
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Research Products
(1 results)