2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナイト流不確実性と再帰的期待効用理論の融合と株価プレミアムパズルの解決
Project/Area Number |
06J05938
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
浅野 貴央 慶應義塾大学, 経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 不確実性 / 非期待効用理論 / ポートフォリオ選択 |
Research Abstract |
平成18年度は研究実施計画に基づき、ファイナンスに関する論文を3本執筆・国際ジャーナルに投稿し(うち1本は17年度に投稿し審査が継続していた論文。)、1本がMathematical Social Sciencesに採択された。残る2本は現在、審査が継続中である。 経済学では、「不確実な状況」と「リスクを伴う状況」を概念的に厳密に区別する。「リスクを伴う状況」とは、どの事象が起こるのか正確にはわからないが、それらが起こる確率はわかっている状況を意味し、「不確実な状況」とは、それぞれの事象が起こる確率さえわからない状況を意味する。両者を区別するため、後者の概念を、この二つの概念の相違を主張した経済学者にちなんで「ナイト流不確実性」と呼ぶが、1980年代後半に研究が始まったナイト流不確実性という概念が金融市場および個人の意思決定にどのような影響を与えるかを分析することが本研究の目的である。 Mathematical Social Sciencesに採択された論文は、リスク、ナイト流不確実性とも異なる曖昧さ(ambiguity)という概念に基づき、投資決定問題を分析、曖昧さが合理的な投資家の行動にどのような影響を与えるかを分析した。具体的には、人々が株式を購入するか売却するかという問題において、曖昧さの程度が高まると、人々が自らの投資ポジションを変えない価格帯(以下、portfolio inertia。)が拡大し、曖昧さの程度が低下すると、縮小する、という結論を得た。これは、より多くの情報を持つ投資家がより少ない情報を持つ投資家と比較してportfolio inertiaが狭い、ということを含意し、リスク、ナイト流不確実性の理論の枠組みでは分析できなかった結果である。この論文はナイト流不確実性とは異なる曖昧さという視点からportfolio inertiaの存在を証明し、曖昧さという視点から合理的な意思決定者の行動を分析、曖昧さの重要性を明確にした。
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Research Products
(1 results)