2006 Fiscal Year Annual Research Report
諸礼節・儀礼等の相互関係表現行為の分析を通じた室町期公武統治機構構造の解明
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06J06000
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
桃崎 有一郎 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 拝賀 / 礼節 / 室町殿 / 公武統治機構 / 足利義満 / 公家政権 / コスト / 中世朝廷経済 |
Research Abstract |
上記研究課題に基づき、中世朝廷における重要な礼節行為の一つ「拝賀」について基礎的/発展的考察を行い研究論文に発表した。既に投稿・掲載決定済みの論考に基づき、本年度は後掲雑誌論文の2番目の論考にて、「拝賀」という行為が公家社会の構成員(廷臣)に強いた具体的コストと、室町後期に経済状況の悪化により大部分の廷臣が拝賀遂行不能になった事の意義を明らかにし、そこから敷衍して中世朝廷の維持コストと財政・経済構造について具体的に考察した。 また後掲雑誌論文の3番目の論考にて、室町幕府三代将軍足利義満が右大将という官職に任官した際、それに付随して行われた拝賀儀礼の具体的経緯の考察を通じて、彼が<武家政権の頭首=室町幕府将軍>から<朝廷・幕府(公家政権)を含む全国的・統一的政権の頭首=「室町殿」>へと脱皮した契機がこの任官にあり、その事実を天下にアピールする目的で行われたのが史上稀に見る規模の拝賀であった事を明らかにした。 更に上記研究の過程にて、室町時代の公武統治機構構造の解明には、当該期の同時代史料(廷臣の日記・古文書等)の活字化と学会での共有が喫緊の大前提である事を痛感し、各研究機関に所蔵されながらその存在・内容がほとんど知られていなかった関係史料の翻刻(活字化)を行った。後掲雑誌論文の1番目の論考は、大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立歴史民俗博物館が所蔵する、従来ほとんど知られていなかった廷臣の日記について当該機関に調査に赴き、原本を実見して書誌的情報を記録し、伝来過程・書写者の推定等を行い、併せて記録の本文を活字化したものである。 以上に平行して、近年刊行された3冊の重要な研究書について書評を行い、その学説史上の意義と到達点・課題を明らかにする作業を行った。
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Research Products
(3 results)