2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J06029
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田久保 圭誉 慶應義塾大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 幹細胞 / 精原細胞 / 精子形成 / 毛細血管拡張性小脳失調症 / 細胞周期 / アポトーシス |
Research Abstract |
我々の研究グループはこれまでにAtaxia Telangiectagia-Mutated (Atm)のノックアウトマウスの骨髄造血幹細胞において、活性酸素種の上昇により、p38MAPKおよびp16^<Ink4a>が活性化し、最終的に枯渇することを明らかにしてきた。近年になって幹細胞システム間で共通の分子基盤がその未分化性維持に寄与していることが明らかとなっているため、今回われわれは幹細胞システム共通の未分化細胞維持においてAtmを介した活性酸素代謝の分子基盤の重要性についての検討を行った。 まず、これまでAtm遺伝子を欠損した精巣では減数分裂期の異常しか言及されてこなかったため、改めてAtm遺伝子欠損マウスの精細管の形態学的変化を経時的に観察したところ進行性の精原細胞の喪失を認めた。また、ATM蛋白の活性化を一部の精原細胞で認めた。これらの観察を併せると、精原細胞の維持にAtm遺伝子が寄与している可能性が示唆された。Atmノックアウトの進行性精原細胞喪失は抗酸化剤の経口投与では回復できず、またp16^<Ink4a>の上昇も認められなかった。すなわち、造血幹細胞の異常とは異なるメカニズムの寄与が強く疑われた。その一方、8週齢のマウスではAtmノックアウトでBrdU陽性の精細管が野生型に比して著名な減少を認め、またTUNEL法およびFACSによって精原細胞は野生型に比べて有意にアポトーシスが亢進していることが確認された。また、精原細胞での遺伝子発現を検討したところ、精原細胞ではcyclin D1とD2の発現が低下とBaxの発現の上昇を認めた。これらの変化はAtm欠損精原細胞の細胞周期停止とアポトーシスの分子基盤の一端に寄与していると考えられる。 本研究から、Atm遺伝子を欠損した精巣では、減数分裂期以前の細胞で細胞周期停止とアポトーシスの亢進という異常があることが明らかになった。またそのメカニズムは潜性酸素代謝以外の機構の関与が推定された。精原細胞分画は精子幹細胞を含む分画であり、Atm遺伝子欠損によって精巣の幹細胞維持にも異常がある可能性が示唆された。
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Research Products
(5 results)