2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J06036
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐野 ひとみ Keio University, 大学院・政策・メディア研究科, 特別研究員(DCI)
|
Keywords | 心筋細胞 / 発生 / 電気生理学 / 細胞シミュレーション / システム生物学 / 理論生物学 / E-Cell |
Research Abstract |
本研究では、現存する細胞モデルの中では高精度に現象を再現できる心筋細胞の電気生理学的モデルに基づき、心筋細胞が常にその機能を維持しつつ著しく異なる細胞に分化する過程のモデル化と観察事象の記述に留まらない考察を行う為のシミュレーション(試行実験)を行っている。昨年度は、齧歯類の発生過程上典型的な4段階(胎生初期、胎生後期、新生仔期、成体)における心室筋細胞の活動電位が細胞膜を流れるイオン電流・交換体の量的変化のみで良く再現できることを示した。 本年度は、構築されたモデルを用いたシミュレーションの応用として、発生・分化の途中段階で採用された細胞のデザインを俯瞰し、モデリング・シミュレーションにより新たな解釈を加えることのできる問を模索、心筋細胞発生過程における諸現象を司る背後のメカニズムを理論的・定量的に説明した。 まず、一つ目の問として、新生仔期段階におけるNa^+/Ca^<2+>交換機転の過剰活性の意義を考察し、Na^+/Ca^<2+>交換機転の増加が筋小胞体によるCa^<2+>の取り込みの不足により延長したCa^<2+>トランジェントの持続時間を短縮させ、新生仔心室筋細胞モデルが一拍動あたりに消費するATPの削減に至ることが分かった。 二つ目の問では、不規則に活動する細胞と受動的な細胞が混在する心筋組織の安定性の考察を行った。電気的に繋げた二つの細胞から構成されるモデルを用いて、内向き整流K^+電流(I_<K1>)の抑制及び過分極活性化陽イオン電流(I_<ha>)の導入により誘発した自発興奮の同調性の検証を行った。その結果、I_<K1>の抑制により誘発した自発興奮は、コンダクタンスが異なる2つの細胞間でも同調されたが、I_<ha>の導入により誘発した自発興奮は、自発的な興奮が消失することが分かった。
|
Research Products
(4 results)