2006 Fiscal Year Annual Research Report
一次元多層構造の希土類有機金属クラスターの気相生成と誘電率・発光特性の評価
Project/Area Number |
06J06050
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
細谷 夏樹 慶應義塾大学, 大学院理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多層サンドイッチ / 有機金属 / クラスター / レーザー蒸発法 / 分極率 / 電気双極子モーメント |
Research Abstract |
物質の誘電特性は構成要素である分子の分極に基づくものであり、物質の最小機能単位とされるクラスターの分極現象を観測することは、クラスターの幾何構造の評価や新奇物性の発見へとつながる。本年度は、電場偏向実験による希土類多層サンドイッチ有機金属クラスターの分極率測定を実施し、クラスターの幾何構造および電子状態の評価を行なった。また、単層から十数層に及ぶ多層サンドイッチクラスターの分極率をサイズごとに測定することで分極率のサイズ効果について検討した。 希土類多層サンドイッチ有機金属クラスターはレーザー蒸発法を用いて気相生成し、分子線にした状態で不均一電場中を通過させることで分極を誘起した。電場中で分極したクラスターは光イオン化後に質量スペクトル上で観測され、電圧印加の前後におけるスペクトル形状の変化を統計的に解析することによって各クラスターの分極率を求めた。 レーザー蒸発法によるクラスターの気相反応によって、金属から配位子への逐次的な電荷移動によって連綿とした多層サンドイッチ組成を有するクラスターの生成が確認された。特に、クラスター生成部の冷却は多層化反応を促進してナノワイヤー化を可能にした。このようにして生成したクラスターの分極率を測定した結果、サンドイッチクラスターでは金属と配位子のイオン結合に由来したイオン分極を起こすことが明らかになった。とりわけ、金属と配位子の組成が1:1のハーフサンドイッチクラスターでは、幾何構造の非対称性に由来する電気双極子モーメントの存在が確認され、多層化に伴う電気双極子の一次元配列を起こすことがわかった。すなわち、生成した多層サンドイッチクラスターが高い分極異方性を有する誘電体物質の機能単位として極めて有望であることを示唆している。
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