2006 Fiscal Year Annual Research Report
バーチャル線虫連合学習モデルによる放射線ストレスに対する神経回路の応答機構の解析
Project/Area Number |
06J06258
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
鈴木 芳代 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | C.elegans / コンピュータシミュレーション / 連合学習 / 放射線照射 / ストレス応答 |
Research Abstract |
線虫C.elegansは,通常,NaClに対して化学走性を示し寄っていくが,エサがない(飢餓)状態でNaClで条件付けを行うと,NaClを忌避するようになる(連合学習)。本研究では,条件付け後に生じるこの応答の変化を神経回路レベルで理解することを目的に,線虫の神経応答のコンピュータシミュレーションを行う.加えて,放射線ストレスが,この連合学習にどのような影響をもたらすのかを明らかにする.本年度は,主に以下の二つの内容を実施した. 1.化学走性に関する神経回路のプロトタイプモデルの構築 これまでに明らかにされている線虫野生種の神経回路マップから,化学走性に関与する神経細胞(ニューロン)とその神経結合を抽出し,化学走性神経回路を再現するコンピュータモデルを作成した.本モデルを用いて連合学習前後の応答のシミュレーションを行ったところ,介在ニューロンAIY周辺のシグナル伝達が,連合学習の前後で特に大きく変化することが示唆された.この結果は,AIYがNaClと飢餓の連合学習に重要な役割を果たすとした先行研究の実験結果に一致するものである.次年度からは,本モデルを用いて連合学習における放射線応答の解析を行う。 2.放射線(ガンマ線)照射実験 本研究では,原子力機構高崎研のイオンビーム照射施設に付随する重イオンマイクロビーム照射装置を用いて,線虫の局所域,特に中枢神経に放射線(重イオン)を照射し,放射線応答を神経回路レベルで明らかにすることを目指している.この局所域照射実験に向けた準備として,線虫の全身に^<60>Coガンマ線を照射し,NaClと飢餓の連合学習における放射線応答を調べた.この結果NaClへの化学走性の変化は,NaClと飢餓の条件付け(学習)時に放射線を照射した場合においてのみ大きく変動する傾向があることが明らかとなった.
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