2008 Fiscal Year Annual Research Report
バーチャル線虫連合学習モデルによる放射線ストレスに対する神経回路の応答機構の解析
Project/Area Number |
06J06258
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
鈴木 芳代 Japan Atomic Energy Agency, 量子ビーム応用研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | C.elegans / コンピュータシミュレーション / 化学走性学習 / 放射線照射 / ストレス応答 |
Research Abstract |
線虫の放射線応答を神経回路レベルで明らかにすることを目的に,1.線虫の放射線応答実験および,2.線虫神経系の数理モデル化とシミュレーションに関する以下の内容を実施した. 1.線虫の放射線応答実験:線虫の運動は,生存に影響しない程度の^<60>Coガンマ線照射(0〜500Gy)により,線量に依存して低下する.この放射線影響の機構を明らかにするため,すでに運動低下の機構がよく知られている接触刺激(エサの知覚)との関係を調べた.この結果,放射線による運動低下の機構には,ドーパミンを介した情報伝達とは異なる情報伝達経路が関与していることが推測された.さらに,放射線照射により生成される活性酸素種の一種である過酸化水素を線虫の全身に曝露したところ,放射線を照射した線虫と類似した運動が観られたことから,放射線による運動の低下が,活性酸素種などを介した情報伝達により誘導されている可能性が示唆された. 2.線虫神経系の数理モデル化とシミュレーション:線虫の化学走性に関与する神経回路を数理モデル化し,これを用いてNaClとエサの連合学習の前後での神経の内部状態を推定するシミュレーションを実施し,学習関与シナプスを絞り込んだ.また,1.の実験で明らかになった線虫の運動に対する放射線影響の作用機序を探るため,周期的なくねり運動を再現する運動系モデルを完成させた. 放射線照射実験と数理モデルとによる研究により,線虫の学習における放射線応答の神経機構の一端を明らかにした他,線虫の運動に対する放射線影響を初めて明らかにした.
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Research Products
(5 results)