2006 Fiscal Year Annual Research Report
同位体分析による地球環境中における放射性核種の移行挙動に関する素過程の解明
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06J06290
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
堀江 憲路 独立行政法人国立科学博物館, 理工学研究部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 放射性損傷 / 変質作用 / ラマン分光分析 / 局所同位体分析 / 酸化還元環境 / 移行挙動 / 希土類元素 / 年代測定 |
Research Abstract |
自然界における放射性核種ならびに核分裂生成物の移行挙動を解明し,拡散・固定をもたらした地球化学的環境を推定することを目的とし,オクロ・バゴンベ鉱床周辺から採取した母岩試料を対象として,局所同位体分析ならびに分光分析を行った.電子プローブマイクロアナライザーならびに高感度高分解能イオンマイクロプローブを用いた詳細な観察から,ジルコンならびに楔石の変質過程において,主成分元素と置換してウランや希土類元素が鉱物中に固定されることが明らかになった.一方,アパタイトは変質作用を受けた痕跡が観察されず,化学的にも初期的な情報を保持していた.アパタイトの鉱物学的安定性,つまり溶解度は酸性環境下において高く,塩基性下において低い.楔石中のチタンの溶解度は強酸性下,もしくは強塩基性下において高くなることから,本試料中のジルコンや楔石は塩基性下で変質作用を受けたと考えたれる.バゴンベ鉱床の母岩からはジルコンを取り囲むようにウランに富む鉱物が形成されていることが明らかとなり,ウラン鉱物の風化作用に伴い拡散したウランの一部がジルコンの変質部位に固定されていると考えられる.ジルコンの変質過程を詳細に観察するために,ラマン分光分析を用いた結晶構造観察を行った.変質作用は結晶度の低い部位から進んでおり,結晶度の低下は結晶生成時にジルコンに取り込まれたウランやトリウムに起因していることが明らかとなった.さらに非変質なジルコンにおいて結晶度の低下した部位から鉛が失われており,U-Pb放射壊変系を用いたジルコンの地質年代の解釈に新たな情報を加えることに成功した.また,ウラン鉱物は主成分元素の濃度が多様であり,二次イオン質量分析計を用いた局所U-Pb年代測定は不可能であると報告されていたが,標準試料を含む測定方法を再検討し,複数種のウラン鉱物に関して高精度のU-Pb年代を得ることに成功した.
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Research Products
(4 results)