Research Abstract |
放射性核種や希土類元素の移行挙動を解明することを目的として,電子プローブマイクロアナライザーならびに二次イオン質量分析計を用いて,鉱物レベルにおける元素存在度分析ならびに同位体分析を行った.本研究を遂行する上で,元素の濃集・拡散挙動の顕著であると考えられる,宇奈月地域ならびに韓国中部沃川帯を研究対象とした.両地域は中圧変成作用を受けており,地質現象に伴う元素の移行挙動を研究する上で,有用な地域であると考えられる.宇奈月地域では,流紋岩を原岩とする珪長質変成岩が捕獲岩として花崗岩中に存在している.両岩石から得られたジルコンU-Pb年代は,それぞれ258Maと253Maであり,中圧変成作用がこの5Maの期間に生じたことを示している.また,花崗岩に貫入もしくは花崗岩中の捕獲岩として存在している変斑レイ岩中は251Maという年代を示し,花崗岩質マグマと苦鉄質マグマが同時期に存在していたことを示唆する.変斑レイ岩の貫入部においてジルコンは変質しており,CaやFe,Alといった元素が取り込まれている.変質したジルコンは軽希土類元素に富み,正のEu異常を示す.変質作用を受けたジルコンのTh/U比は高く,変質作用の過程においてThを取り込んでいると推定される。一方,変斑レイ岩中のアルカリ長石中にはREEを富む鉱物が形成されており,接触変成部においてジルコンとアルカリ長石がREEとThを固定する主要な鉱物種であると考えられる.沃川帯北部に位置する片麻岩複合岩体のジルコンU-Pb年代は,片麻岩複合岩体が京畿地塊の一部であり,飛騨・隠岐テレーンに関連することを示唆する.変成作用によりるジルコン過成長部のU-Pb年代とモナズ石の年代は調和的であり,LREE・Th燐酸塩鉱物であるモナズ石の形成により軽希土類元素とThに枯渇したために,過成長部ではこれらの元素に乏しいと考えられる.
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