2006 Fiscal Year Annual Research Report
CRMP-2と線虫UNC-33が関与する神経細胞の形態及び極性形成機構の解明
Project/Area Number |
06J06337
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉村 武 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 神経細胞 / 軸索 / 極性 / CRMP-2 / UNC-33 |
Research Abstract |
神経細胞は1本の軸索と複数の樹状突起という2種類の神経突起を有することで極性を持つ。樹状突起は他の神経細胞の軸索から得られた情報を統合して軸索へ受け渡す。軸索と樹状突起は共に未成熟な神経突起から分化するが、神経細胞の極性形成は未分化な神経突起のうちの1本が急速に伸長し軸索へと分化する現象として特徴づけられる。神経突起の機能性質についての解明は進んでいるが、神経細胞の極性形成に関する分子機構は殆ど理解されておらず、神経突起が伸長し軸索へと分化する時に働く分子機構に関する知見は乏しい。 本研究では、神経細胞の極性形成を制御する分子機構を明らかにすることを目的とする。私の所属していた研究グループはCRMP-2が神経細胞の軸索伸長や極性形成に重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。昨年度までに、CRMP-2がチューブリンヘテロ2量体と複合体を形成して微小管重合を促進し、軸索伸長を促進することを見出した。私はGSK-3βによりCRMP-2がリン酸化されるとチューブリンとの結合能が低下しCRMP-2が不活性化されることを見出した。また、CRMP-2がKinesin-1の軽鎖と結合しチューブリンやSra-1などの積み荷の軸索への輸送を制御することも明らかにした。今年度、私はCRMP-2の新規作用機構を明らかにする目的でCRMP-2結合蛋白質の探索を行い、CRMP-2の上流及び下流で働く様々な分子を同定した。現在、同定された分子とCRMP-2の相互作用を検討中である。また、海外の研究グループと共同研究を行い、GSK-3βによるCRMP-2のリン酸化が制御する神経細胞の極性形成の分子機構の詳細な解析を行い学術論文として発表した。さらに、私はCRMP-2の関与する神経細胞における極性形成の分子機構についての総説を発表した。 IQGAPファミリーはRac1やCdc42の標的蛋白質として様々な生理現象に関与すると考えられていたが、その神経細胞における機能は不明であった。我々は新規Rac/Cdc42標的蛋白質としてIQGAP3を同定し、IQGAP3が細胞骨格の再構築を介して神経細胞の軸索伸長を正に制御することを明らかにした。これらの結果を学術論文として報告した。 本年度の成果は、CRMP-2がどのようにして神経細胞の極性形成を担うのか理解する上で重要である。故に、本年度の研究計画はほぼ達成できたと考えている。
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Research Products
(4 results)