2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J06347
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
荘司 長三 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | ヘム酵素 / シトクロムP450 / 過酸化水素 / 水酸化反応 / 疑似基質 / 非天然基質 |
Research Abstract |
本研究課題は,長鎖脂肪酸の水酸化反応を過酸化水素のみで触媒するヘム酵素であるシトクロムP450_<BSβ>(P450_<BSβ>)を様々な非天然基質の酸化が可能な人工酵素へと改変することを目的として行われた。P450_<BSβ>は、安価な過酸化水素のみで機能する魅力的な酵素であるが、基質である長鎖脂肪酸のカルボキシル基がプロトンの受け渡しを行う一般酸塩基触媒として酸化活性種生成に関与する独特の反応機構により,長鎖脂肪酸以外の基質を酸化することは通常できない。しかし,構造が天然基質に良く似たカルボキシル基を有する擬似基質をP450_<BSβ>に基質として誤認識させて取り込ませることにより酸化活性種が生成され、様々な非天然基質の酸化反応が可能となることを見出した。擬似基質は、長鎖脂肪酸に比べてアルキル鎖長の短い直鎖カルボン酸を用いた。アルキル鎖長の異なる一連のカルボン酸(炭素数2〜10)を擬似基質として様々な酸化反応を行った結果、スチレンのエポキシ化反応やエチルベンゼンのベンジル位の水酸化反応が進行することが明らかとなった。初期酵素活性は、過酸化水素を利用可能な代表的なヘム酵素であるクロロペルオキシダーゼよりも高い活性を示した。さらに、触媒活性やエナンチオ選択性が、擬似基質のアルキル鎖長の違いにより変化することも明らかとなった。本手法は、従来から行われているアミノ酸の部位特異的置換を一切行わずに、野生型酵素の基質特異性を劇的に変換しておりこれまでに報告例のない新規酵素改変手法といえる。また、酵素自体を改変すること無しに、酵素活性ならびにエナンチオ選択性を外部添加物質により変更可能であることを示した点で注目に値する。添加する擬似基質を最適化することにより、更なる高活性やエナンチオ選択性を付与することが期待できる。
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Research Products
(1 results)