2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J06347
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
荘司 長三 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員(SPD)
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Keywords | ヘム酵素 / シトクロムP450 / 過酸化水素 / 水酸化反応 / デコイ分子 / 非天然基質 / 結晶構造解析 |
Research Abstract |
長鎖脂肪酸の水酸化反応を過酸化水素のみで触媒するヘム酵素であるシトクロムP450_<BSβ>(P450_<BSβ>)に,構造が天然基質(長鎖脂肪酸)に良く似た擬似基質(デコイ分子)を基質として誤認識させて取り込ませることにより,様々な非天然基質の酸化が可能となることを見出した.そして,触媒活性やエナンチオ選択性が,デコイ分子の構造の違いにより変化することも明らかとした.デコイ分子が酸化されず,非天然基質が酸化される基質誤認識システムの反応メカニズムを理解するためには,基質の有無およびデコイ分子結合による構造変化と,それに付随する酵素機能のスイッチングメカニズムを明らかにする必要があった.そこで,基質の結合に伴う構造変化を明らかにするため,基質非結合型のP450_<BSβ>の結晶化とX線構造解析を行った.天然基質の除去と精製法ならびにその結晶化条件を確立し,基質非結合型の結晶を得た.構造解析の結果,分解能2.9Aで基質非結合型の構造を明らかにすることに成功した.反応場には,パルミチン酸に対応する電子密度が見られないことを確認した.基質非結合型の構造は既報のパルミチン酸結合型とほぼ同じで,基質の結合による構造変化が非常に小さいことを明らかとした.したがって,基質非結合の状態ですでに長鎖脂肪酸のアクセスを可能とするチャネルが存在し,構造の変化を伴わなくとも長鎖脂肪酸を取り込める構造をとっていることが明らかとなった.また,過酸化水素の取り込みと水の排出に関与していると考えられていたチャネルも基質の有無にかかわらず開いていることが確認された.今回得られた蛋白の構造情報は,P450_<BSβ>の酵素反応の全容を明らかとするためだけでなく,デコイ分子設計による酵素反応制御においても重要な情報と言える.
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Research Products
(8 results)