2007 Fiscal Year Annual Research Report
太陽活動の長周期変動のメカニズム解明および太陽活動が地球気候に与える影響の評価
Project/Area Number |
06J06353
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮原 ひろ子 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 太陽 / 宇宙線 / 宇宙線起源核種 / 加速器質量分析法 / マウンダー極小期 / 小氷河期 / 気候変動 / 年輪 |
Research Abstract |
本研究では、屋久杉等の古木や南極氷床コアに含まれる宇宙線起源・放射性核種の濃度を1年の時間分解能で測定し、過去2500年間における太陽11年/22年周期の特性の変化を調べ、太陽の数十から数百年スケールの長周期変動のメカニズムを明らかにすることを目的としている。また、太陽の長周期変動が地球の気候に影響するメカニズムについても調査を行っている。本年度は主にマウンダー極小期について、高精度で宇宙線起源・放射性核種(炭素およびベリリウム10)の測定を行い、マウンダー極小期における宇宙線の11年/22年周期変動の特性を詳細に調べた。測定には、東京大学が保有する加速器質量分析計を使用した。また、本測定に用いたものと同じ古木中の酸素同位体比をあわせて測定し、マウンダー極小期における気候変動の復元を行い、宇宙線変動との関連性を調べた。 その結果、(1)マウンダー極小期においては宇宙線のモジュレーションが現代とは大幅に異なっており、太陽双極子磁場が負(A<0)のときに宇宙線の飛来量が顕著に増大すること、(2)そのため宇宙線起源・放射性核種の変動には明瞭な22年周期が現れること(ただしマウンダー極小期では太陽周期が14年に伸びていたため、いわゆる"22年"周期は実際には28年周期であった)、(3)グリーンランド地域および日本における気候変動は、日射量の変動よりも宇宙線の変動と似通ったパターンを保有すること(すなわち太陽双極子磁場が負のときに気候は寒冷化する)、等が明らかとなった。このことは、太陽が気候変動に影響するメカニズムには宇宙線が大きな役割を果たしていることを示している。マウンダー極小期における宇宙線の特異な変動に着目することで、十〜数十年の時間スケールの気候変動を理解する上で非常に重要な新しい知見が得られた。この結果については現在論文改稿中である。
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Research Products
(5 results)