2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ組織制御による磁束ピンニング点を導入した高温超伝導薄膜の創製
Project/Area Number |
06J06513
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
三浦 正志 名古屋大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 磁束ピンニング点 / 臨界電流密度 / 高温超伝導薄膜 / 薄膜成長 / ナノ組織制御 |
Research Abstract |
本研究では、超伝導電力貯蔵装置、国際的な共同研究開発が進んでいる核融合装置など高磁場下で使用する超伝導マグネットへの応用が期待されるREBa_2Cu_3O_<7-δ>超伝導体の中でもSmBa_<1+χ>βa_<2-χ>Cu_3O_<7-δ>(SmBCO)を選択し、超伝導薄膜の作製を行った。以下に本年度得られた成果を示す。 1.Sm-rich相生成メカニズムの解明 独自の手法である低温成膜(LTG)法により作製したLTG-SmBCO薄膜内部にSm-rich相が微細分散するメカニズムを解明するため、超伝導層のSm/Ba組成比を変化させ、LTG-SmBCO薄膜作製を行った。これらの薄膜の微細構造観察を行った結果、それぞれ薄膜内部に存在するSm-rich相の密度や大きさが異なることが確認された。この実験結果をもとにSm-rich相の生成メカニズムについて、独自にSm-rich相生成モデルを提案し、LTG-SmBCO薄膜内部におけるSm-rich相は、成膜時に自由エネルギーが低く準安定なために成長することを明らかにした。 2.新たな磁束ピンニング点導入法の開発 B=5T以上の高磁場における臨界電流密度(J_c)の更なる向上を目的に高い特性を示すLTG-SmBCO薄膜にナノサイズSm-rich相を人工的に導入し、その超伝導特性及び磁束ピンニング特性の評価を行った。その結果、LTG-SmBCO+nanoparticle薄膜は、世界で初めて、実用線材であるNbTi線材(@4.2K)同等のJ_cを、液体窒素温度(@77K)、B=9Tの高い磁場まで保持することに成功した。さらに、65K、B=17Tという高磁場においても核融合装置に用いられている(NbTi)_3Sn線材(@4.2K)以上のJ_cを示すことが確認された。この薄膜の組成分析を行った結果、球状のSm-rich相が高密度に存在するだけでなく、これまでに報告例がない網状にあらゆる方向に成長したSm-rich networkが高密度に存在することを確認した。 3.金属テープ上の高特性超伝導薄膜の作製 LTG法を金属テープ上薄膜へ適応し、その超伝導特性及び磁束ピンニング特性について評価を行った。その結果、単結晶基板だけでなく金属テープ上においてもLTG-SmBCO薄膜は、NbTi線材(@4.2K)と比較しても、B=5T(β//c)でNbTi線材同等の高いJ_cを示した。この値は、77Kにおける金属基板上のREBCO薄膜では世界最高値である。また、65K、B=17Tにおいて(NbTi)_3Sn線材(@4.2K)に比べても高いJ_cを示すことが確認された。
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