2006 Fiscal Year Annual Research Report
変分モンテカルロ法を用いた低次元強相関系で起こる超伝導状態の計算
Project/Area Number |
06J06521
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡邉 努 名古屋大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 超伝導 / 金属-絶縁体転移 / 変分モンテカルロ法 |
Research Abstract |
本年度は当初の研究目的に従い、κ-(BEDT-TTF)_2Xと呼ばれる有機化合物において実現する超伝導状態の機構を明らかにするために、変分モンテカルロ法による数値解析を行った。κ-(BFDT-TTF)_2Xは正三角格子に近い伝導面を有し、加圧や陰イオン(X)の置換によるバンド幅の変化により、超伝導箱縁体転移を引き起こすことが知られている。しかし、バンド幅の変化による金属-絶縁体転移と、三角格子がもたらす磁気的なフラストレーション効果が強い系において、電子の多体問題を解析することは非常に困難であることが知られており、これらの効果を同時に考慮した計算結果はこれまでほとんど報告されていなかった。しかし本研究では、最適化変分モンテカルロ法と、2次の強相関効果までを取り入れた試行波動関数を用いることにより、この問題を克服することができた。そして、κ-(BEDT-TTF)_2Xの伝導面を異方的三角格子ババードモデルでモデル化し、このモデルにおけるバンド幅の変化とフラストレーションの強さを軸とした相図を作成した。以下に、この相図から導き出された主な結果を列挙する。 (1)上記のモデルにおいてバンド幅の変化により、あらゆる強さのフラストレーション領域において、一次の金属-絶縁体転移が実現することを明らかにした。 (2)電子相関によるバンドの強い繰り込み効果により、銅酸化物超伝導体で実現するとされる反強磁性絶縁状態とd波超伝導状態が、フラストレーション効果が非常に強いパラメータ領域においても実現し得ることを明らかにした。 以上の結果は相関効果を正しく考慮しながら、実際のκ-(BEDT-TTF)_2Xにおいて観測されている電子状態と、これまで報告されている弱相関近似により得られた計算結果を定性的に説明していると言える。以上の結果は別記の論文により報告している。
|
Research Products
(4 results)