2008 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の温度情報処理に関わる神経回路におけるグルタミン酸を介した情報伝達機構の解析
Project/Area Number |
06J06636
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大西 憲幸 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | グルタミン酸 / 線虫 / 神経回路 / 遺伝学 |
Research Abstract |
本研究では、線虫の温度走性行動をモデル系として、神経回路レベルでのグルクミン酸を介した温度情報の伝達・処理機構と、温度走性行動との相関関係の解析を行なっている。本研究者はこれまでに、グルタミン酸をシナプス小胞へ取り込むVGLUT(Vesicular Glutamate Transporter)の線虫ホモログEAT-4についての解析を通して、温度走性の神経回路中の温度受容ニューロンAFDと介在ニューロンRIAからそれぞれの下流に位置するニューロンへの情報伝達が、グルタミン酸を介して行われることを明らかにした。さらに、温度走性行動に関与するグルタミン酸受容体を複数同定することに成功した。 本年度は、グルタミン酸が担う情報についてより詳しい知見を得るために、温度走性行動テストをさらに詳細に行った。その結果、温度走性の神経回路中のもう一つの温度受容ニューロンAWCにおいてもEAT-4が機能していることが明らかになった。さらに、AFDからシナプス後ニューロンにグルタミン酸を介して伝達される情報が線虫の低温への移動を引き起こし、反対にAWCもしくはRIAからシナプス後ニューロンにグルタミン酸を介して伝達される情報が線虫の高温への移動を引き起こすことが明らかになった。興味深いことに、AFDとAWCはともに介在ニューロンAIYへ投射していることが示されていることから、AIYがAFDとAWCからの異なる情報を共にグルタミン酸を介して受容し、さらにそれぞれの情報を異なる情報として区別することができる可能性が考えられた。そこでAIYニューロンでの情報の受容に注目した解析をさらに進めたところ、クロライドチャンネルタイプのグルタミン酸受容体GLC-3がAIYにおいてAFDからの情報を受容していることが示唆さされた。 これまでの研究を通して、温度情報入力から行動としての出力に至るまでの神経回路内における情報処理について、新たな知見を得る事ができた。それと同時に、2種類の拮抗した情報の神経回路内での処理機構を解析できる、非常に有用なモデル系を提示する事ができた。
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Research Products
(2 results)