2008 Fiscal Year Annual Research Report
-「形ある水」触媒の創製-酸-塩基相互作用に基づく新しい分子認識と触媒作用の開発
Project/Area Number |
06J06659
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉本 純一 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 特別研究員-DC1
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Keywords | 水分子 / 酸-塩基相互作用 / 水素結合 / アミノ有機ボラン-水型化合物 / ニトロアルドール反応 |
Research Abstract |
「形ある水」触媒の触媒作用に関する重要な知見が多ぐ得られた。まず、本触媒の水分子が反応に関与していることが速度論的、また分光学的研究から明らかになった。また、興味深いことに「形ある水」触媒と水分子のプロトンを重水素に置き換えた触媒を用いて、速度論的同位体効果を観測した結果、後者ほうが反応速度が大きいという結果を得た。本来であれば、O-D結合のほうがO-H結合よりも結合解離エネルギーは大きいため、重水素に置き換えた触媒のほうが反応速度は低いと予想される。しかし、実験結果はその逆であり、現段階では我々はプロトンよりも強い重水素カチオン由来の水素結合が反応を促進したと解釈している。 「形ある水」分子触媒の分光学的研究から、本触媒は低温において二種類の異性体が平衡状態にあることを見いだした。そのうち一つは水分子が伸縮運動している異性体と、もう一方は水分子内のO-H結合が一定の距離を維持したまま、ホウ素上で回転している異性体である。この知見に基づいて、水分子のダイナミクスを利用した触媒作用の構築を目指している。具体的には、「形ある水」触媒は「H-O-H」が活性種であるが、これに例えば、nBu_4NOHなどを添加し「(H-O-H-O-H)^-nBu_4N^+」というイオン対を触媒内で構築し、(H-O-H-O-H)^-部位は伸縮運動を通じて電荷が移動するシステムを構築する。この水分子のエンジニアリングを通じ、不斉場や反応場が人工的に制御された触媒空間内で酵素同等もしくはそれを凌駕する触媒作用発現の展望が開けたと考えています。
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Research Products
(2 results)