2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J06773
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
濱口 航介 独立行政法人理化学研究所, 甘利研究ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 神経回路 / 相関 / 乱雑さ / 多安定 / Fokker-Planck方程式 |
Research Abstract |
神経回路モデルを与えたとき,神経同士の活動相関を理論的に求めることは一般に非常に難しい問題である.しかし神経活動からの外界刺激の推定を行うとき,活動相関は推定精度を悪化させる.したがって活動相関と推定精度の関係を明らかにすることは重要な問題である.本研究では,この問題に対し,以下のような研究を行った. 1.適当な条件とモデルの選択により,発火率の空間的分布を解析的に求めることができる.これに加えて,中立安定状態にある神経回路の挙動を一次元上のブラウン運動に射影することで,短時間での相関関数の形状を理論的に求めることに成功した.ここから,相関関数の形状は発火率分布の微分関数から構成されていることが証明された.したがって,このモデルの活動相関には正と負,両方の値を持つことが示された.これは従来の数値計算による報告とも一致する.またこのモデルにおいて,外部刺激の位置をあらわす神経活動はノイズが小さいときにはほぼ指数関数的な追従性能を持つことがわかった. 2.大脳においては外部刺激から始まり高次機能に連なる階層型の神経処理が行われていると考えられているが,そのような階層型神経モデルにおける活動相関と神経結合がつくる安定性との関係について調べた.ここでは,多電極を用いて神経集団から活動を計測する際に現れると予想される,"繰り返し発火"と呼ばれる構造について調べている.各々の神経層において複数の安定な活動伝播モードがある場合に,伝播する神経活動の速度が何に依存しているかは,明らかではなかった.本研究では,Fokker-Planck方程式による安定な計算法を用いて,いずれの安定状態にあるかに依存して現れる相関構造が,時間スケールの変換において不変である事を示した.
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