2006 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀後半のナポリにおける喜劇オペラに関する総合的実証研究
Project/Area Number |
06J06880
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
山田 高誌 東京芸術大学, 音楽学部, 特別研究員(SPD)
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Keywords | 音楽学 / オペラ史 / 劇場史 / イタリア / 文献学 / オペラ・セリア / オペラ・ブッファ / 経済史 |
Research Abstract |
本年は、当初計画通り、ナポリ銀行歴史文書館において、ナポリの民間劇場ヌォーヴォ劇場支配人G.ブランキ、およびフィオレンティーニ劇場等支配人G.コレッタの支払い記録(1775-90年分史料)等を調査し、興行記録の発掘を進めた。作業を進める中で、王室の劇場関係の支払いを行っていたナポリ王室国庫・王室領担当官の銀行口座を特定し、1775年における王室と民間劇場との関係を明らかにした。 また、劇場付きの"レチタティーヴォ作曲家"G.ベネヴェントについて焦点をあて、名前と身分を銀行文書より特定した後、ナポリ音楽院に所蔵される18世紀後半の作曲家"自筆"オペラ・スコア約200点の中に彼の筆跡探し出したところ、彼は1766年から1797年までの喜劇オペラ、オペラ・セリア計80点以上の作品のレチタティーヴォ部分を"作曲"していたことを明らかにした。これは、ナポリのオペラ製作の特徴であった"分業制"を解明する初めての総合的研究となっただけでなく、個別作曲家研究においても述べられることのなかった一次資料そのものに関わる情報更新となり、大きな研究成果となる。なお、翌19年度にはイタリア、日本において公表が行われる予定である。 さらに、本年は喜劇オペラの対ジャンルであるオペラ・セリアの楽譜調査も平行して行った。対象は、18世紀後半ナポリの宮廷劇場で上演された100作品を超えるスコアであり、それら作品の複写をほぼ完了した。構造分析も進めているが、民間劇場出身の興行師G.コレッタが王立劇場の経営に参画するようになって以降、喜劇オペラの特徴的な音楽様式であるイントロドゥツィオーネ、アンサンブルフィナーレ、1楽章式序曲などが、宮廷オペラへと導入されていることが明らかとなり、興行方針の変化によってジャンル混交が起こったとする仮説を裏付けた。 本年度は、上記、また次頁に記す業績のほか、異なる新しいテーマによる5件の口頭発表を行い、来年度以降の論文の準備を行うものとする。各発表内容を要約すると、(1)喜劇オペラにおける女性の地位(音楽史研究会:2007年6月21日、桐朋学園芸術短期大学)、(2)1775年シーズンのヌォーヴォ劇場の正確な上演日程の特定(日本演劇学会:2007年6月25日、成城大学)、(3)喜劇オペラのジャンルとしての高踏化(早稲田大学演博COE:2007年3月1日、早稲田大学)、(4)19,20世紀におけるナポリ楽派の受容と新古典派の位置(早稲田大学イタリア研究所シンポジウム:2007年3月17日、早稲田大学)、(5)18世紀作曲家の作曲書法と、ナポリのレチタティーヴォ製作の特徴(音楽史研究会:2007年4月12日、桐朋学園芸術短期大学)
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Research Products
(4 results)