2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒアルロン酸を利用した転写促進機能を持つ生体適合性遺伝子デリバリーシステムの構築
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06J06981
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
伊藤 智子 大妻女子大学, 家政学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 遺伝子導入 / 転写 / ヒアルロン酸 / 両性イオン型高分子 / HMGタンパク |
Research Abstract |
非ウィルス型ベクターとしてDNAと静電的に結合するポリカチオンなどが多く研究されているが、これらのDNAとの複合体は生体成分と非特異的に相互作用することが問題となっている。さらにDNA/ポリカチオン複合体は強く凝縮しているために転写因子が近づけず、被転写効率が低いことが臨床に向けての障害となっている。 我々は、DNA/ポリカチオン複合体をヒアルロン酸でコートし、複合体の表面電荷をマイナスにすることでこれらの相互作用を低減できることを見出した。またヒアルロン酸はそれ自体がリガンドとなって癌細胞に特異的に遺伝子導入できることを報告してきた。 一方、細胞の核内ではクロマチンの高次構造を両性イオン型タンパクであるHMGタンパクが弛緩し転写因子の接近を容易にすることが報告されている。そこで、HMGタンパクに特有の両性イオン型構造を模倣して、ヒアルロン酸にスペルミンを付加させた両イオン型高分子(Spn-HA)を合成し、そのクロマチンやDNA複合体の被転写効率への影響を調べた。 始めにこのような両イオン型高分子のDNA複合体に対する弛緩効果について調べてみた。Spn-HAを添加すると、DNA/Polycation複合体中の蛍光色素の発光強度がやや回復した。また蛍光の異方性比は低下し、Spn-HAがDNA複合体を弛緩させることが確認された。 次に、Spn-HAのクロマチンに対する被転写効率改善効果についてE-Coli由来のRNA Polymeraseを用いて評価した。Spn-HAをマウス肝細胞より単離したクロマチンに添加すると、被転写効率は、クロマチン単独の場合と比べて約8倍向上した。クロマチンの代わりにDNA/Polycation複合体を用いた実験に於いても同様の効果が見られた。 これらの結果からSpn-HAはDNA複合体を弛緩し、転写因子の接近を容易にして被転写効率を向上させることが確認された。
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Research Products
(2 results)