2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J06988
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
須磨 航介 分子科学研究所, 電子構造研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分子分光 / 高分解能レーザー / 酸素鎖分子 / 星間化学 / 短寿命分子 / HOOOH / 分子錯体 / ベンゼン |
Research Abstract |
本年度は、酸素鎖分子をはじめとする短寿命分子種の電子遷移を高感度、高分解能で観測する分光手法の開発と酸素鎖分子の星間での探査を行った。まず、星間空間における酸素鎖分子の探査について概説する。野辺山電波天文観測所の45m電波望遠鏡を用い、大質量星の形成領域であるW51で酸素鎖分子HOOOHの探査を行った。悪条件により、HOOOHの微弱な信号を検出するのに必ずしも十分な観測時間を稼ぐことはできなかったが、いくつかの遷移については、予想された周波数に弱い信号を観測することができた。また、現在ウォータールー大学との共同研究により、天文観測で比較的感度の高いミリ波、サブミリ波領域でHOOOHの実験室での観測を行うことを予定している。今後は、これらのデータも併せてHOOOHの星間空間での存在、存在量、他の酸素鎖分子の存在の可能性について議論する。 次に、光源開発について概説する。本研究では高分解能光源を開発し、高感度の分光手法である多光子共鳴イオン化分光法と組み合わせることで、短寿命分子種の高分解能電子励起スペクトルの観測を可能とした。DPSSレーザー励起のcwチタンサファイアレーザーからのシード光をYAGレーザー励起の色素アンプで増幅し、パルス状の赤外光を発生させ、さらに非線形結晶により三倍波に変換し、紫外光を得た。基本波である赤外光の線幅を測定したところ、約210MHzであり、フーリエ変換限界に近いパルス光が発生していることが分かった。これを用い、共鳴2光子イオン化により、試験的にベンゼンのS_1←S_0遷移の高分解能スペクトルの観測を行った。このとき、ベンゼンの単一の回転線の線幅は約350MHzであった。さらに、Ne-ベンゼン1:1錯体のS_1←S_0遷移の観測を行った。ベンゼン単体の信号に比べてかなり弱いものの十分なS/Nで信号を観測でき、クラスターに対しても十分な検出感度を持つことを確かめた。
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