2006 Fiscal Year Annual Research Report
低磁場時間分解ESR装置の開発と生体分子ラジカル対系におけるスピンダイナミクス
Project/Area Number |
06J06998
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
三浦 智明 静岡大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ラジカル対 / 低磁場 / 磁場効果 / 低磁場時間分解ESR / 生体分子 / ナノ秒磁場スイッチング / モンテカルロ法 / ミセル |
Research Abstract |
低磁場時間分解ESR装置の試作を行った。既存のマグネットとRF発振器、新たに購入した各種ラジオ波部品、RF増幅器および自作の100MHz ESRプローブを組み合わせ、100MHzのESRシグナル検出装置を作成した。RF信号の検波系は機能していることが確認されたが、ESRシグナルの検出には至らなかった。ESRプローブの感度が低いことが一因として考えられ、今後コイルやインピーダンスマッチング回路の改善を行う予定である。 ナノ秒磁場スイッチング法を用いてミセル中のラジカル対の低磁場スピンダイナミクスについて詳細な検討を行った。本法より、光反応系で初めて低磁場スピン混合過程のリアルタイム観測に成功した。実験結果からミセル系のスピン混合はかなり速い段階(〜10ns)でコヒーレンスを消失していることがわかり、ラジカル対の再衝突過程が低磁場でのスピンダイナミクスに大きな影響を与えることが明らかとなった。低磁場時間分解ESR装置によりコヒーレンスの消失過程に関してより詳細な知見が得られるものと期待される。 ラジカル対の分子ダイナミクスが低磁場でのスピンダイナミクスに与える影響を直接的に評価するため、モンテカルロ法にもとづく新規の理論計算方法を開発した。計算結果から分子運動(主に再衝突)によってスビン間相互作用が揺らぐと、急激にスピンコヒーレンスが消失することが実証された。また、前述のミセル系の実験結果シミュレーションからミセル中の拡散係数の見積りが可能であった。つまり、低磁場でのスピンダイナミクスから束縛系のおけるラジカル対の分子ダイナミクスを抽出できる可能性が開かれた。 今後タンパク系をはじめ生体分子ラジカル対系で実験、理論計算を行い、特異なスピンダイナミクス、分子ダイナミクスの詳細な検討を行う予定である。
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Research Products
(1 results)