2006 Fiscal Year Annual Research Report
海馬関連神経ネットワークにおける空間記憶システム形成の生理心理学的研究
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06J07195
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岡田 佳奈 同志社大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経ネットワーク / 記憶 / 海馬 / Papez回路 / 行動実験 / 神経毒損傷 / 近赤外レーザー / 神経細胞の可逆的不活性化 |
Research Abstract |
空間記憶形成に関わる海馬とその関連領域の神経ネットワークを生理心理学的観点から明らかにし,かつ精緻化することが本研究の目的である。海馬に関連する神経ネットワークとしては,海馬下位領域を結ぶものと海馬とそれに関連する領域を結ぶものがある。これら2つのネットワークが,二重回路を形成していることを仮説し,そのモデルを記憶形成過程に関して構築することを目指す。長期増強や遺伝子発現によるシナプスの長期的形態変化が記憶の神経モデルとして盛んに検証されているが,異なる脳領域間の機能的連携を取り扱うことで,こうした神経モデルへの心理学的対応を検証した。 また,ヒトにおける宣言記憶とラットにおける空間記憶という海馬依存型記憶には,認知的あるいは神経メカニズム上の共通する基本的特質があると考え,ラットを用いて空間的意味記憶と空間的エピソード記憶について海馬関連神経ネットワークの関与を取り扱った。 まず,空間記憶形成における海馬下位領域の機能的関係性を検証した。Schaffer側枝を介したCA3とCA1の機能的連携が空間意味記憶や空間エピソード記憶の形成について重要であることが明らかになった。海馬交連によるCA3とCA1の連携は補助的な役割を果たす。歯状回,CA3,CA1のそれぞれに関しては,両記憶の形成における役割に分化が見られた。歯状回は空間意味記憶と空間エピソード記憶の形成に突出して重大な役割を担っていた。CA1も両記憶の形成に役割を果たしていたが,CA3は単独では空間エピソード記憶についてのみ役割を担っていた。 次に,海馬采-脳弓を介して海馬に投射している内側中隔と海馬の機能的連携について検討したところ,両記憶の形成に必要であることが明らかになった。 続いて,中隔-海馬系におけるコリン作動性ニューロンの役割やそれぞれの海馬下位領域が中隔-海馬系に果たす役割について検討中である。
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Research Products
(1 results)