2007 Fiscal Year Annual Research Report
海馬関連神経ネットワークにおける空間記憶システム形成の生理心理学的研究
Project/Area Number |
06J07195
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岡田 佳奈 Doshisha University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 神経ネットワーク / 記憶 / 海馬 / Papez回路 / 行動実験 / 神経毒損傷 |
Research Abstract |
空間記憶形成に関わる海馬とその関連領域の神経ネットワークを生理心理学的観点から明らかにし、かつ精緻化することが本研究の目的であった。海馬に関連する神経ネットワークとしては、海馬下位領域を結ぶものと海馬とそれに関連する領域を結ぶものがある。これら2つのネットワークが、二重回路を形成していることを仮説し,そのモデルを記憶形成過程に関して構築することを目指した。まず、Morris型水迷路課題とSteele&Morris型遅延場所合わせ課題を用い、空間記憶の成立に際して海馬内神経回路が神経ネットワークとして作用するか否かを検討した。主要な海馬下位領域であるCA1、CA3および歯状回の空間記憶に対する関与を各下位領域の損傷実験によって検討した。CA1損傷によって、全海馬損傷に類似した空間記憶障害が示された。歯状回損傷ラットは、海馬全損傷を上回る重篤な障害を示した。CA3損傷ラットでは、Morris型水迷路における空間記憶障害は見られなかったが、遅延場所合わせ課題では、遅延依存的な記憶障害が見られた。これは、海馬下位領域の空間意味記憶と空間エピソード記憶における機能分化を示すものであった。次に、海馬とその皮質下投射を受ける部位がネットワークとして記憶機能を有するか否かという点に関し、海馬と視床前核、あるいは海馬と内側中隔が空間学習に連携して関係しているのかどうかを調べた。結果、Morris型水迷路課題及び物体探索課題において、交叉損傷ラットは同側損傷ラットや正常ラットよりも空間記憶に劣るという結果を得た。このことから、海馬と視床前核は神経ネットワークを構成して空間記憶形成に関係していると考えた。更に、私は、コリン作動性ニューロンによって中隔-海馬系を形成している中隔と海馬の機能的関係性を検討するため、物体探索課題、Morris型水迷路課題、Steele&Morris型遅延場所合わせ課題を用いて内側中隔と海馬の機能的連携を検討した。その結果は、海馬と内側中隔の機能的連携が、空間意味記憶と空間エピソード記憶の両方に関与していることを示した。海馬下位領域である歯状回とCA3あるいはCA1がそれぞれ分化した機能を担っており、少なくともCA1とCA3はネットワークとして作用するという証拠が得られた。また、海馬とそれに神経連絡する視床前核あるいは内側中隔が互いに連携して空間記憶に関係することがわかった。
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Research Products
(1 results)