2006 Fiscal Year Annual Research Report
中世カスティーリャにおけるコミュニケーションからみた広域共同体の関係構造
Project/Area Number |
06J07258
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
大原 志麻 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 王権 / カスティーリャ / スペイン / 都市 / 女性 / 中世 / インフォーマル / 貴族 |
Research Abstract |
中世カスティーリャにおける、広域なコミュニケーションの総体の具体的な機能をみていくため、まずその背景となる、「王権を中心とした大きな秩序」の解明を今年度の基礎研究として実施した。これまでは15世紀に特化した研究を行ってきたが、二度の「革命」(14世紀のトラスタマラ革命、15世紀の貴族革命)を包摂して、中世を貫く長期持続的な文化的考察が必要であると考えるからである。わが国でもよく知られている英仏などの王権に比べ、当該地域に関しては、国内においてほとんど知られていない。また、権威論や儀礼研究が盛んな他国の王権論に比べ、そうした文化的トピックへの言及が少ない。この視点からの研究によって、(1)「西ゴート・ルネサンス」ともいうべき、西ゴート時代が権威面での大きな影響力 (2)カスティーリャはもともと統一的なイデオロギーが欠落していたが、「レコンキスタ」と呼ばれる運動を背景に、経済的側面の強い、調整機能を持つ合理的な王権として伸張し、「騎士としての王」「暴君論」を重視し、「塗油」「治癒儀礼」顧みない独特の特徴を持つ「非神聖王権」であるという点 (3)血族的連続性の重視、などの独自性があることがわかった。この成果は、今年5月末の教会と社会研究会(ES研 東京大学)での報告が決定している。 また課題研究の鍵となるコミュニケーションの重要な要素である、都市における水をめぐる諸権力の関係性についての考察を深めるため、7月に所属研究機関である大阪市立大学にスペインより、イサベル・デル・バルディビエソ教授を招き、多くの同時代の研究者に集まって頂き、議論の場を持った。この成果は、マリア・イサベル・デル・バル・バルディビエソ(大黒俊二 大原志麻 村上司樹 訳)「後期中世カスティーリャにおける都市と水-水をめぐる王権・貴族・コンセホの権力構図-」『都市文化研究』2007年、132-145頁として刊行された。さらに、カスティーリャ王権の重要な特性である「法典」「女性による継承」への見解を明らかにしていくため、特に後者について、母校である奈良女子大学の協力で、同教授によるシンポジウムの場を設けた。この成果もまた、マリア・イサベル・デル・バル・バルディビエソ(大原志麻 訳)「カトリック女王イサベルの宮廷における女子教育」『寧楽史苑』第52号、2007年、34-45頁、として刊行されている。
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