2007 Fiscal Year Annual Research Report
超微量安定同位体測定を応用した動態解析・トレーサビリティ分析システムの開発
Project/Area Number |
06J07407
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
鈴木 彌生子 Tokyo Metropolitan University, 理学研究所・化学専攻, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 環境動態解析 / 安定同位体比 / 精米 / コシヒカリ / 脂肪酸 / 牛肉 |
Research Abstract |
精米工場や農業試験場等の協力により素性の確かな試料を1100試料収集し、炭素・窒素・酸素安定同位体比(δ^<13>C・δ^<15>N・δ^<18>O)を測定した。緯度に対してδ^<18>Oをプロットすると、緯度が高くなるにつれてδ^<18>Oは低くなる傾向が得られた。日本全国の水のδ^<18>Oが報告されており、緯度・高度など地理的条件によって日本国内でもδ^<18>Oが変動する。本研究結果から、コメのδ^<18>Oが生育水のδ^<18>Oと正の相関が得られたことから、水の変動を保存していると考えられる。また、国産米8試料(新潟・長野・島根・沖縄)について、生育水とともに収集し、コメについては、脂肪酸を抽出し、分子レベルのδDを測定した。コメと生育水を比較したところ、正の相関関係が得られ、コメのδDが水の水素同位体比を反映することが分かった。水のδDは、地理的条件を反映することが報告されており,δDが地域性の違いを判別するツールとして有用である可能性を見出した。 牛肉については、国産20試料、豪州産21試料および米国産17試料を収集し、δ^<13>C・δ^<15>N・δ^<18>O解析を行った。δ^<13>Cは、米国産(-12.6‰)が国産(-19.3‰)および豪州産(-22.1‰)よりも高い値を示した。米国での餌に占めるトウモロコシの割合が高いことが推測され、給餌内容の違いが各国の牛肉のδ^<13>Cの違いを反映していると考えられる。δ^<18>Oは、豪州産(+17.2‰)が日本産(+10.4‰)および米国産(+10.8‰)よりも高い値を示した。牛が利用している水資源のδ^<18>Oが異なることが反映されていると考えられる。 以上より、炭素・窒素・酸素・水素安定同位体比について、総合的に評価することで、農水産物の産地特定の可能性が見出された。安定同位体比解析は、DNA判別や微量無機元素測定などの他の技術と相補的に利用すれば、強力な産地判別技術になる可能性がある。
|
Research Products
(9 results)