2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本における生産性-マクロ、及びマイクロデータを用いた多角的アプローチ-
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06J07550
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
滝澤 美帆 一橋大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ミクロデータ / 生産性 / M&A / 企業の退出 / unobserved heterogeneity / shadow of death / TFP |
Research Abstract |
90年代の日本経済の停滞を理解し、そこから抜け出す政策を構想、提言するためには、生産性の動向に関する分析は欠かせない。生産性上昇は、少子化、高齢化によって労働人口が減少する今後の日本における主要な経済成長の源泉である。中でも日本経済の持続的発展を考える上では、ミクロデータに基づく、企業行動の方向性に関する研究が必須である。具体的には、本研究では日本における企業の直面する市場環境(M&Aを含めた国際、国内競争市場の影響や金融環境)と生産性、企業の参入や退出行動と生産性といった壮大な研究目的を持ち、産業、ミクロデータを用いて分析を行った。 「企業活動基本調査」の企業財務データと、RECOF社によるM&Aデータをマッチングさせ、M&A企業の特徴、パフォーマンス等を分析した。また、国内M&A、対日M&Aの差異に関する比較分析も行った。得られた主な結果は以下の通りである。1、外国企業は、労働生産性やTFPといった生産性指標、および収益率が高く、研究開発や輸出を活発に行っている日本企業を買収対象に選ぶ傾向があった。また、買収後は、被買収企業の生産性指標や収益率はさらに改善した。2、日本企業は、生産性指標、収益率、および輸出比率が低い日本企業を買収対象に選ぶ傾向があった。また、買収後は、被買収企業の生産性指標や収益率には有意な正の効果は無かった。3、なお、産業別の推計や国内企業間買収をグループ内・外の買収に分けた推計も行ったが、主な結果は違わなかった また、企業の退出に関する研究では、企業の将来の生存に対して生産性がどのような影響を与えるのかを、企業の規模や観測できない異質性(unobserved heterogeneity)を考慮し、企業の撤退前パフォーマンスを「企業活動基本調査」を利用し、検討した。その結果、企業は「突然死」(sudden death)に直面しているのではなく、「死の兆候」が(shadow of death)が存在していることがわかった。将来撤退する企業は、撤退の5年前から低生産性を示していることが明らかになった。さらに、企業の生存分析に観測できない企業の異質性が有意に影響を与えていることもわかった。
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Research Products
(7 results)