2006 Fiscal Year Annual Research Report
国際連合安全保障理事会の憲章第七章に基づく国際法の執行・強制機能に関する研究
Project/Area Number |
06J07557
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
丸山 政己 一橋大学, 大学院法学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際組織法 / 安全保障理事会 / 国際連合 / 立憲的アプローチ / 国際法の執行・強制 / 国連憲章 |
Research Abstract |
18年度は、研究計画に従って1990年代以降の安保理の実行について「国際法の執行・強制機能」という視角から実証的に実態を把握・分析することを試みた。先行研究を参考にして、安保理の実行を大きく「侵略に関する事例」、「大規模な人権侵害及び国際人道法の重大な違反に関する事例」、「国際テロリズムに関する事例」に分類し、諸事例に関する決議及び議事録等をできる限り多く検討するよう心がけた。但し、時間的な制約から「国際テロリズムに関する事例」を中心的な分析対象とせざるを得なかった。この作業から導き出された問題点は、大きく以下の3点である。第1に、安保理が実質的に司法機関のような役割を果たしていることについて懸念を表明する国々が確かに存在する。第2に、同様に立法者のような役割を果たすような事例も存在1し、そのことに対する懸念も見受けられる。しかし、全体としては国々の支持を得ているという評価が妥当であるように思われる。以上の2点は、「国際法の執行・強制機能」の観点からは前提となるべき問題であり、理論上は慎重な判断の必要な問題であり、学界でも論争となっている点であるが、議事録等を検討してみると国々及びその他の国際組織(の機関)の懸念は他にある。すなわち第3に、複数の共通利益が競合しているような状況が生まれているということである。例えば、テロへの対処と人権の関係が問題となっている。このような競合とも思われる事態は、より一般化すれば安保理に対して「一般国際法秩序への配慮」が求められているということになるであろう。さらに非国家主体への対応が特徴的になってきており、安保理は武力行使の許可や伝統的な経済制裁以外にも様々な対応措置を展開しているが、そのような措置と対応すべき事態との均衡性ないし適切性を把握する枠組が必要になってきている。19年度は、以上のような問題点をもう少し整理し、論文としてまとめたい。
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