2006 Fiscal Year Annual Research Report
奴隷解放期における人種とジェンダーの政治-米国南部ペン学校の実験教育の背景と思想
Project/Area Number |
06J07558
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
荒木 和華子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 解法民教育 / ポートロイヤルの実験 / 公 / 私的領域論 / ホワイトネス / 南部再建 / ペン解放民学校 / 奴隷制廃止主義者 / 黒人教育 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀半ば以降の米国における奴隷解放期に元奴隷を対象として着手された教育の背景と思想を、サウスカロライナ州セントヘレナ島のペン解放民学校に着目して考察するものである。ペン学校の「実験」的教育を通して、まず新南部における黒人教育史の出発点を明らかにし、その上で当該社会における人種・ジェンダー・南北地域間関係の再編過程を描き出すことを目的としている。 18年度はまず、「ポートロイヤルの実験」の一翼を担った学校教師や解放民救助・教育委員会の史料を検証し、人種的他者やジェンダーに関する言説が占領下での解放奴隷の教育をめぐってたちあらわれてくる歴史的背景を検討した。11月はじめの<教育と社会>研究会において、「米国奴隷解放期における(ネオ・)アボリショニストによる黒人教育実験の歴史的文脈」と題して報告をした。 また、11月末の国際会議(豪州メルボルン大学開催)では、公/私的領域論とホワイトネス研究のアプローチを採用し、解放民女性労働へのまなざしや黒人学校教師のアイデンティティの分析を中心とした発表を行った。奴隷制廃止主義者は普遍主義思想に基づいて人種や性による社会からの解放を唱導したが、解放民の労働と教育のための援助活動という実践は、高度に人種・ジェンダー化された領域内で展開されたことが明らかとなった。その成果はHistoricising Whiteness : Transnational Perspectives on the Construction of an Identityに所収されることになった。 さらに、2-3月にはペンセンター他、サウスカロライナ州とヴァージニア州内の大学図書館や公文書館にて精力的に史資料を収集した。特にペン学校関係者(再建期当時の学生の子孫を含む)への聞き取り調査は大きな収穫であり、今後はコミュニティの「記憶と語り」という側面から再建期の黒人教育の意義を検証する。
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Research Products
(2 results)