2006 Fiscal Year Annual Research Report
薬物依存の基礎を成す神経回路再編成とグリア細胞の関与
Project/Area Number |
06J07608
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高山 尚子 長崎大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | モルヒネ / ミクログリア / 依存 / 神経回路網構築 / BDNF |
Research Abstract |
研究代表者は、モルヒネ慢性投与時における新規神経回路網構築の解析とこれに対するグリア細胞の関与と活性化機序、また脳部位特異性を明らかにすることで、薬物依存形成・維持を標的とした新しい治療薬の開発と薬物依存形成機構の統合的理解を図った。以下のような事実を明らかにしつつある。1)モルヒネ依存におけるグリア細胞活性化とその役割の解明。この解析では、モルヒネ慢性投与時に、脳内の特異的領域においてミクログリアの活性化が観察された。また、ミクログリア阻害剤であるミノサイクリンの脳室内投与やリポソームに閉じこめたクロドロネートの全身投与により、モルヒネ鎮痛耐性や依存性形成が阻害された。2)モルヒネ依存とBDNFとの関連。以前の代表者らの研究では、モルヒネを培養ミクログリアに作用させたとき、rufflingなどの形態変化とともにBDNF遺伝子発現上昇が観察された。今回の研究成績では実際に蛋白質レベルでも確認された。この現象がモルヒネ耐性・依存性形成と関連するか否かを解析した。モルヒネによるBDNF発現上昇作用は、培養ミクログリアのみにかんさつされ、培養神経細胞やアストロサイトにおいては観察されなかった。マウスにモルヒネを慢性投与した時、実際にミクログリアが活性化され、BDNF発現上昇もその細胞で観察された。ところが、発現上昇する大半のBDNFは神経に見出された。このことから、モルヒネ処置したミクログリア培養上清を培養神経に作用させると、神経細胞においてBDNFの発現上昇が観察された。一方、BDNF、抗体をモルヒネ慢性投与後に適用したとき、モルヒネ耐性は著明に抑制された。以上の事実から、モルヒネをマウスに慢性投与したとき、まずミクログリアが活性化され、BDNF産生を引き起こすが、同様に未同定の液成因子を分泌し、神経細胞に働きBDNFを産生させ、おそらく神経回路再構築やNMDA受容体発現上昇することで、モルヒネ耐性・依存性形成を行っているという仮説が成立した。
|