2006 Fiscal Year Annual Research Report
糖タンパク質の細胞内品質管理におけるカーゴレセプターの分子認識機構の解明
Project/Area Number |
06J07840
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
神谷 由紀子 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 細胞内レクチン / 糖タンパク質 / 立体構造形成 / 輸送 / 分解 / 高マンノース型糖鎖 / 糖鎖ライブラリー |
Research Abstract |
本研究は、細胞内における糖タンパク質の立体構造形成・分解・輸送といった品質管理機構を担う細胞内レクチンについて精密解析を行うことにより、上記の過程の分子機構を明らかにする事を目的としている。 糖タンパク質の輸送を司る細胞内レクチンとして、VIPLおよびERGIC-53が知られている。これらは、細胞生物学的な知見は得られているものの、その糖鎖結合の詳細については明らかとされていない。私は、高マンノース型糖鎖ライブラリーを用いて、VIPLおよびERGIC-53との相互作用解析をフロンタルアフィニティークロマトグラフィー法を用いて行った。その結果、VIPLは高マンノース型糖鎖内の主にManα1-2Manα1-2ManからなるD1アームと結合し、D1アームのグルコース残基の存在はVIPLとの親和性を低下させることが明らかとなった。一方ERGIC-53はマンノース5残基以上からなる高マンノース型糖鎖と幅広く結合し得ることが明らかとなった。このことから、糖タンパク質の担う糖鎖がプロセッシング過程においてグルコースが切除された後、VIPLは糖タンパク質と結合することによって糖タンパク質を小胞体内に留め、ERGIC-53は小胞体内において正しい立体構造を獲得した糖タンパク質の小胞体からゴルジ体へと輸送する役割を担っていることが示唆された。また、VIPLの糖鎖認識ドメインの結晶化に成功し、低分解能ながらも電子密度像を得ることに成功した。 ERGIC-53が担う糖タンパク質の輸送はERGIC-53による糖鎖認識のみならず、ERGIC-53と結合するタンパク質との連携により担われている。ERGIC-53は血液凝固因子欠損症の原因遺伝子産物として知られている。ERGIC-53はERGIC-53と同様に血液凝固因子欠損症の原因遺伝子産物として同定されたMCFD2と複合体を形成することが知られている。NMR解析の結果、ERGIC-53の糖鎖およびMCFD2の相互作用部位を明らかとした。以上のことから、血液凝固因子VおよびVIIIの輸送はERGIC-53による糖鎖認識とMCFD2によるポリペプチドーポリペプチド相互作用を通じて担われていると考えられた。
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