2006 Fiscal Year Annual Research Report
エミール・ゾラ『三都市』『四福音書』から20世紀小説への展開
Project/Area Number |
06J07851
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 琢三 明治学院大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際情報交換 / フランス / 小説 / 文献学 / 政治思想 |
Research Abstract |
本年度は、エミール・ゾラの後期小説『三都市』『四福音書』研究の準備作業として、これらの作品が書かれた19世紀末から20世紀初頭の文学におけるイデオロギー的問題を抽出するため、我が国ではあまり注目されていないポール・ブールジェやモーリス・バレスらの同時代のイデオロギー小説の分析を中心に研究を進めた。その成果のひとつとして、まず、2006年5月に慶應義塾大学で開催された日本フランス語フランス文学会春季大会で「ブールジェ『弟子』と世紀末イデオロギー小説」と題した発表を行った。この発表では、ブールジェの『弟子』に始まり、バレスの『根こそぎにされた人々』に至る、師弟の対立を物語の軸にした世紀末の一連のイデオロギー小説が、1870年の普仏戦争からのフランスの国家再建、そして共和派と反共和派の対立というテーマを内包していることを明らかにした。8月から9月にかけてパリのフランス国立図書館において文献調査を行い、その収穫をもとに、10月に岡山大学で開催された日本フランス語フランス文学会秋季大会で「政治的カオスから新しい秩序へ〜世紀転換期におけるパナマ事件」と題した発表を行った。ここでは、パナマ事件を扱ったウジェーヌ・メルキオール・ド・ヴォギュエの小説『死者が話す』をおもに取り上げ、この疑獄事件が当時の文学者に及ぼしたイデオロギー的影響を考察した。さらに、2007年4月に発表予定の論文「イデオロギー小説における時間〜バレス『国民的エネルギーの小説』をめぐって」では、『三都市』『四福音書』とほぼ同時期に書かれたバレスの三部作小説を、物語の時間性とイデオロギーという観点から分析し、当時のナショナリズムを代表するバレスの思想の特徴を解明した。来年度は、これらの成果をもとに後期ゾラの小説が内包するイデオロギーの時代性と独自性を考察していきたい。
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Research Products
(1 results)