2008 Fiscal Year Annual Research Report
エミール・ゾラ『三都市』『四福音書』から20世紀小説への展開
Project/Area Number |
06J07851
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 琢三 Meiji Gakuin University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際情報交換 / フランス / 文学 |
Research Abstract |
本年度は、前年度の研究において明らかにしたエミール・ゾラの思想や政治的イデオロギーが、晩年の小説『三都市』『四福音書』にどのように反映され、表象されているのかという問題を考察した。具体的には、晩年のゾラが6作のオペラ台本を執筆し、『三都市』『四福音書』にも文体や構成の面でオペラ的な演劇性や音楽性が見出せることに注目して、後期ゾラにおけるオペラ台本と小説の関係、小説におけるオペラ性とイデオロギー的言説の関係の分析を中心に研究を進めた。そして、ゾラのオペラ台本に関する文献資料の調査のために、2008年8月から9月にかけて約2週間パリに滞在し、フランス国立図書館などに赴いた。この研究の成果として、まず「ゾラのオペラにおけるイデオロギーの表象〜『メシドール』を中心に」と題した論文を執筆し、2009年3月に刊行されたフェリス女学院大学の『国際交流研究国際交流学部紀要』第11号に発表した。この論文では、ゾラのオペラ台本のひとつ『メシドール』において表象されているイデオロギーの諸相を検討しながら、ゾラのオペラと小説との関係性をイデオロギー的側面から考察した。さらに2008年11月8日に岩手大学で開催された日本フランス語フランス文学会秋季大会において「ゾラのイデオロギー小説におけるオペラ」と題した口頭発表を行った。この発表では、『三都市』『四福音書』におけるオペラ的側面を分析しながら、それがイデオロギーの伝達という小説の機能とどのように関係しているのかを分析した。そして、ゾラが小説にオペラ的要素を導入するのは、歌によって自然と生命の力を賛美し、キリスト教に代わる「新しい宗教」のイデオロギーを表現するためであり、こうした音楽性こそが、同時代のブールジェやバレスの作品とは異なるゾラのイデオロギー小説の独自性であることを明らかにした。
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Research Products
(3 results)