Research Abstract |
本年度は,PH_3(あるいはB_2H_6)を微量パルス添加してSi-Ge系量子ドット内にP(あるいはB)をデルタドーピングした価電子制御SiドットをSiO_2膜上に形成し,電荷注入・保持・放出特性をAFM/ケルビンプローブにより評価した.さらに,価電子制御したSi量子ドット立体集積構造において観測された発光特性について調べた. 1.AFM/ケルビンプローブによる不純物添加Si量子ドットの帯電評価 個々の量子ドットにおける荷電状態を直接評価するために,p-Si(100)基板上に1000℃で膜厚約4nmのSiO_2膜を形成後,半球状のSi量子ドットを自己組織化形成した.PあるいはBの添加は,Siドットの自己組織化形成の際に,PH_3あるしはB_2H_6を微量パルス導入して行った.真性Si量子ドットから価電子1個の放出に伴う正帯電は探針電圧+1Vで起こるのに対して,P及びBをデルタドーピングした場合では,1個の電子放出に相当する正帯電は探針電圧+0.2V及び+2.0Vで観測される.PドープSi量子ドットは,デルタドープしたPドナーから生じた伝導電子が引き抜かれ,Pドナーの正電荷が顕在化したと解釈できる. 2.不純物添加がGeコアSi量子ドットの帯電状態に及ぼす影響 Geコアを持つSiドットの形成は,Si量子ドット上にGeを選択成長し,引き続いてドット上にSiを減圧CVDして,GeコアをSiクラッドで覆った.GeコアSi量子ドットへの不純物添加は,Geコア形成時のパルス添加により行った.P及びBをデルタドーピングしたGeコアを有するSi量子ドットにおいても,離散的なエネルギ準位を反映した多段階的な電位変化が観測され,真性GeコアSi量子ドットからの1個の電子放出・保持による正帯電及び負帯電はそれぞれ探針電圧+2.0V及び-1.5Vで起こるのに対して,Pをデルタドーピングした場合電子放出による正帯電は+0.5V,Bをデルタドーピングしだ場合,電子保持による負帯電は-0.5Vで観測される.これらの結果は,プローブ電位とGeコアSi量子ドット/SiO_2/Si(100)スタック構造のエネルギーバンド構造の関係から理解できる.すなわち,PデルタドーピングではPドナーから生じた伝導電子が引き抜かれ,Pドナーの正電荷が顕在化し,Bデルタドーピングにおいては正孔への電子注入によってBアクセプターの負電荷が顕在化すると考えられる. 3.不純物添加Si量子ドット/SiO_2多重集積構造からの発光 不純物添加Si量子ドット/SiO_2多重集積構造を活性層とするAuゲート発光ダイオードを作製し,ドット内にデルタドーピングしたP及びBが発光に及ぼす影響を調べた.Si量子ドットへのP添加によって,室温発光が抑制され,非発光再結合パスが生じていることが分かった.Bドープの場合はドット内量子準位間の発光再結合遷移は著しく減少するものの,Bアクセプター準位等のより深い局在準位を介した発光再結合が支配的となることが分かった. 来年度はこれらの結果を踏まえ,PN結合したSi量子ドット集積構造を作成し,その発光特性および誘電特性の評価により,高効率発光および高速光応答の指針を得る.
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