Research Abstract |
昨年度から,希土類四ホウ化物RB_4系の磁気双極子と電気四極子モーメントの秩序状態及びその結晶構造から予想される幾何学的フラストレーションの影響に着目し,複数の希土類四ホウ化物(R=Gd, Tb, Tm, Er)に対して磁化,磁気抵抗,比熱などの基礎的な物性測定を進めてきた. 本年度は特にこれまで物性報告が少ないTmB_4の磁化,比熱,伝導を調べ,中性子・X線を用いた低温粉末回折実験を行った. SQUID磁束計(5T)とロングパルスマグネット(54T,パルス巾36msec)を用いた磁化測定より,c軸方向,c面内に1/2M_sプラトーが存在するだけでなく,1/8M_s,1/3M_s,2/3M_s,3/4M_sの多くの分数プラトーが存在することを明らかにした.フラストレーションをもつ物質は一般に磁化プラトーが多数出現する例が多くあり,他のRB_4でもこれらフラストレーションとの関係に興味が持たれる. TmB_4はT_<N1>=11.7K,T^*=10.7K,T_<N2>=10.0Kで逐次相転移を示すが,粉末中性子回折実験よりT<T_<N2>の秩序相(IV相)の磁気構造はRB_4(R=Gd-Er)の磁気構造(+-+-)とは異なり(++-)であることがわかった.また,T_<N2><T<T^*(III相)とT^*<T<T_<N1>(II相)の中間相ではそれぞれ特有の長周期磁気構造の存在を示すピークを観測した.III相の磁気構造は約8倍周期の非整合型変調磁気構造モデルで説明できた.磁化測定で観測された1/8M_sプラトーの出現に対応する磁気構造として8倍周期の長周期磁気構造が予想される.III相は1/8M_sプラトーの秩序相の高温側の秩序相であり,1/8M_sプラトーの出現はIII相の約8倍周期の磁気構造によるものと考えられる.II相ではRB_4系で初めて複数の伝播ベクトルを発見した.さらに,II・III相で磁気散漫散乱を観測した.これは磁気的フラストレーションによるものと考えられ,1/8M_sプラトーの出現はフラストレーションに起因する可能性が高い. 来年度はRB_4におけるデータをまとめ,RB_4系のプラトー発生条件を突きとめる.
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