2007 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期フランドル都市における宗教活動と宗教心性 -ブルッヘの教会と兄弟団から-
Project/Area Number |
06J08512
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青谷 秀紀 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | フランドル / 教会 |
Research Abstract |
本年度は、8月にブルッヘの司教文書館および国立文書館で敢行した史料調査をもとに、1438年に行われたブルゴーニュ公フィリップの弟ジャンによるシント・ドナース教会参事会長就任儀礼についての研究を進めた。本研究の主要な目的として、様々な社会集団が活動した中世都市ブルッヘにおいて、教会組織や兄弟団などの信心団体がいかなる社会的機能を果たしたのかを明らかにすることがあげられるが、ブルッヘにおける政治的・社会的・文化的中心地であるシント・ドナース教会参事会長の就任儀礼には、君主の政治的指導層から都市エリートまで、広範な階層の人々が数多く参加したのであり、以上のような目的を遂行するためには格好の研究対象であった。また、同教会は都市ブルッヘにおいてもっとも高いステータスを誇る墓所であったが、その指導者に君主側の血縁の者が就任するということは、都市民のアイデンティティにとっても重大な作用をおよぼす出来事であった。埋葬や死者記念のあり方を分析することによって都市ブルッヘにおける宗教心性の様態を明らかにすることも本研究の目標および計画に含まれているが、この点でも、シント・ドナース教会参事会長の就任儀礼に考察を加えることは重要な意義をもつといえるだろう。こうした研究成果の一部は、2008年3月29日、中世英仏史研究会にて報告された。また、こうした現地調査の成果も駆使しつつ、中世後期のフランドル地方を理解するための前提として中世盛期の宗教組織の分析や政治文化の解明も試みたが、これらの成果はそれぞれ2008年3月に論文およびシンポジウムにおける口頭報告の形で発表された。
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Research Products
(2 results)