2008 Fiscal Year Annual Research Report
ニーチェ哲学の通時解釈を手がかりとした近・現代におけるニヒリズムの考察
Project/Area Number |
06J08517
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
竹内 綱史 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生 / 身体 / 自然哲学 / ショーペンハウアー / 卓越主義 / 多元論 / 大学 / 啓蒙 |
Research Abstract |
今年度の研究成果は以下の二点にまとめられる。 1.「生」について。ニーチェに多大な影響を与えたショーペンハウアーは「生」の哲学の創始者である。「意志」は「生」と同一視されるが、身体において直接的に覚知される「力」がその正体である。それは機械論では捉えられない内発的なものであり、所産的自然ではなく能産的自然として彼の自然哲学の基礎に据えられる。それはまた、個体的な生(ビオス)ではなく個体を超えて流れ続ける生(ゾーエー)である。こうしたショーペンハウアーの「生」の哲学がニーチェ哲学に与えた影響について、ニーチェの専門研究では軽視されがちであることは注意すべきである。 2.多元論的卓越主義と大学論。初期のニーチェは教養理念の受け取り直しによる大学の理念の復興を目論んでいたが、それは彼の哲学観にも受け継がれる。ニーチェにとって哲学とは「求道」と「啓蒙」である。求道とは、「真理」を認識し、それに則って生きることである。それは「真の自己」になることでもある。これは卓越主義である。だが一方で、その「真理」とは誰にとっても同じものというわけではない。「真理」は個人的なものであり、多元論的なのである。けれどもその「真理」を体現することで実例として提示され、他の「真理」との競合の中で鍛えられる。そこにある「啓蒙」的共同性、それこそが大学の理念の中にニーチェが見ていたものなのである。
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Research Products
(12 results)
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[Book] 西洋哲学の10冊2009
Author(s)
左近司祥子, 中川純男, 杉山直樹, 村山達也, 石川文康, 竹内綱史, 関口浩, 小島和男
Total Pages
219
Publisher
岩波書店(岩波ジュニア新書)
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[Book] ヨーロッパ現代哲学への招待2009
Author(s)
齋藤元紀, 齋藤智志, 竹内綱史, 伊藤直樹, 村山達也, 吉川孝, 川瀬雅也, 荒畑靖宏, 永野潤, 宮崎裕助, 増田靖彦
Publisher
梓出版社(印刷中)
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[Book] 哲学と大学-近代の哲学的大学論の系譜学と人文知の未来2009
Author(s)
西山雄二, 宮崎裕助, 斉藤渉, 大河内泰樹, 竹内綱史, 野口雅弘, 北川東子, 早尾貴紀, 藤田尚志, 大場淳, 水月昭道
Publisher
未来社(印刷中)