2007 Fiscal Year Annual Research Report
逆行性シグナル伝達における内因性カンナビノイドの分子実体、合成・除去機構の解明
Project/Area Number |
06J08582
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本谷 祐輝 Osaka University, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 内因性カンナビノイド / 海馬 / カンナビノイド受容体 / シナプス伝達 / 逆行性シグナル / 2-アラキドノイルグリセロール / ジアシルグリセロールリパーゼ |
Research Abstract |
内因性カンナビノイドはシナプス活動依存的にシナプス後細胞から合成・放出され、それが逆行性シグナルとなってシナプス前終末に存在するカンナビノイド受容体を活性化し、シナプス伝達を短期的および長期的に抑制する。内因性カンナビノイド放出を誘導する機構の一つとして脱分極によるカルシウム流入がある。しかし、このシグナルがどのような経路によって内因性カンナビノイド産生を引き起こすのかについて明らかでなかった。そこで本年度は脱分極によるカンナビノイド産生の分子機構の解明を目指した。 昨年度の研究および先行研究から逆行性シグナルとしてのカンナビノイドの分子実体が2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)であることが予測された。そこで、2-AGの合成酵素であるジアシルグリセロールリパーゼ(DGL)を阻害することでカンナビノイド放出がどのような影響を受けるか検討した。電気生理学的手法により培養海馬ニューロンより抑制性シナプス後電流を記録し脱分極パルスを与えたときの抑制効果を比べたところ、DGLを薬理学的に阻害すると2-AG放出が抑制された。すなわち、この逆行性シグナル伝達にDGLが必須であることが判明した。次にDGLの基質であるDGの産生経路を探った。カルシウム依存的な活性作用を持ち、DG産生を誘導する酵素としてホスホリパーゼCδ(PLCδ)に注目し、そのノックアウトマウスを用いて2-AG産生を調べた。PLCδ1、δ3、δ4の各サブタイプで比較したがいずれも野生型マウスと2-AG産生において差がみられなかった。すなわち、カルシウム依存的な2-AG産生にはPLCδは寄与しないことが判明した。本研究において脱分極誘導性の逆行性シナプス伝達にDGLが必須であることが明らかになった。DGL上流の分子経路の解明については今後の課題である。
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Research Products
(7 results)