2006 Fiscal Year Annual Research Report
逆行性シグナル伝達における内因性カンナビノイドの分子実体、合成・除去機構の解明
Project/Area Number |
06J08582
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
橋本谷 祐輝 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 内因性カンナビノイド / 海馬 / カンナビノイド受容体 / モノアシルグリセロールリパーゼ / ジアシルグリセロールリパーゼ / 2-アラキドノイルグリセロール / シナプス伝達 / 逆行性シグナル |
Research Abstract |
内因性カンナビノイドはシナプス活動依存的にシナプス後細胞から合成・放出され、それが逆行性シグナルとなってシナプス前終末に存在するカンナビノイド受容体を活性化し、'シナプス伝達を短期的および長期的に抑制する。これまでに内因性カンナビノイドの合成・放出機構については多くのことが明らかになってきたが、その分解とそれにともなう逆行性シグナルの終結の機構に関しては、あまりよくわかっていなかった。そこで本年度は細胞外に放出された内因性カンナビノイドがどのようにして除去されるのかについての研究を行った。 シナプス前終末には内因性カンナビノイドの一つである2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)を選択的に分解する酵素であるモノアシルグリセロールリパーゼ(MGL)が存在する。この酵素に注目しカンナビノイドシグナルの終結にMGLが関与するかどうか検討した。実験にはラット海馬培養ニューロンを用い、抑制性シナプス後電流(IPSC)を記録し、カンナビノイド放出によって生じるIPSCの抑制をモニターした。その結果、MGLを薬理学的に阻害すると2-AG投与によって生じるIPSC抑制が著しく延長した。さらに脱分極誘起による逆行性シグナルも同様に顕著な延長を示した。また高濃度のMGL阻害剤を投与すると徐々にIPSCが抑制された。この抑制はカンナビノイド受容体のアンタゴニストで回復したことから、カンナビノイド受容体依存的であると結論された。したがって、海馬において内因性カンナビノイドが恒常的に放出されていると考えられる。MGLはシナプス前終末において、逆行性シグナルの終結を制御するだけでなく、恒常的に放出されている周囲の内因性カンナビノイドレベルを下げ、逆行性シグナルのS/N比を改善する役割を持つことが明らかになった。
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Research Products
(1 results)