2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J08670
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上野 洋子 大阪大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 夢 / 思想史 / 陳士元 / 『夢占逸旨』 / 敦煌解夢書 / 「真人不夢」 |
Research Abstract |
本年度は、これまで研究を進めてきた明代の夢の理論書『夢占逸旨』から時代を遡り、中国における夢観の展開がどのような過程を経て『夢占逸旨』が生まれるに至ったかの問題意識から、次のような研究を進めた。 『荘子』『周礼』などの古代文献から始まる夢の生成や占夢についての思索が、以降『潜夫論』や『世説新語』、道教文献、敦煌解夢書において、天や聖人が具体的に意識される道徳的な性格と結びつきを強めつつ人間追究の一環として展開し、『夢占逸旨』に至り一つの夢理論として統合されていく過程について考察を行った。その際、儒仏道三教に共通する具体的問題点として、「聖人」という理想的人物への探究精神とその実態、また道家思想に見える魂の浮遊という点に注目し、夢が人間追究の一形態として六朝から宋明までの精神生活とどのように関与したかを考察した。 1.六朝期の資料として『世説新語』や道教文献の『周氏冥通記』を中心に取り上げ、基本的に道家思想の発想を持ちながら、夢生成の問題を人の徳性と具体的に結びつけて考えていく傾向について明らかにした。 2.唐代の筆写とされる敦煌解夢書の序文および全体の構造について考察した。特に、三教の概念を摂取し、魂の浮遊や「消息」などの具体的な概念によって体系的な世界観を提示する序文からは、単に占夢のみを目的とはしない編纂の意識について明らかにした。 3.夢の思索における基礎的な概念の一つとなった「真人不夢」は、夢の思索が人間追究の方向性を持つ上で影響力を持つが、聖人やその夢についての関心も高まる宋代では、これが夢の更なる思索を阻むものにもなる。こうした点から、夢観の展開における停滞とも言える状況を打開するものとして、『夢占逸旨』の思想史的な意義を確認した。
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