2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J08670
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
上野 洋子 Nihon University, 文理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 陳士元 / 『夢占逸旨』 / 夢観 / 儒家 / 明代 |
Research Abstract |
本研究は、中国における夢観の展開というテーマのもと、六朝から宋明の時代を視野に入れ、夢の視点から当時の精神生活を検討するものである。特に本研究において主要な位置を占めるのは、明代の儒者である陳士元が著した『夢占逸旨』である。これまで報告者は、「夢の生成過程」の面から本書と周辺の時代を考察することで、中国思想史における夢観の変容の一端を示してきた。 本年度において報告者は、1年目に得られた成果の延長線上に位置付ける作業として、夢に特化した類書や日用類書について調査を行った。これは、文献学的検討から夢に対する認識の実態についても検討を進めることで、夢の諸相に表れる夢観の流動的な受容形態と展開相とを立体的に捉えることを目的とするものである。また、これと同時に、引き続き『夢占逸旨』についても占夢理論の面から考察を進め、その理念について明らかにするよう努めた。 明代において、夢占いそのものに対する興味は、「関連書の刊行」(『夢占類考』『新?徽郡原版夢学全書』等)という現象として現れる。そこには儒仏道の気風が混在し、当時における夢についての関心事が詳細に記されている。そして、夢についての事柄を盛り込むこうした夢書に対し、『夢占逸旨』は儒学に根差した語り口で夢とのあり方を啓発しており、その点で他書と一線を画すものであるとの見解を得た。これらの作業を通じ、本研究では、これまで論じられることのなかった視点から見た夢の諸相、及びそこに表れる夢観の流動的な受容形態や展開相の一端について一定の成果を得ることができた。なお、上記の作業に関連するものとして、報告者は『夢占逸旨』の占夢理論そのものに関する論考を今年度の成果として発表した。だがその一方で、占夢の状況について進めてきた資料調査の成果については、残念ながら論考として発表するには至らなかった。こちらについては今後の課題としたい。
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Research Products
(2 results)