2006 Fiscal Year Annual Research Report
F.メンデルスゾーンと「演奏会用序曲」:ジャンルとしての成立と位置づけ
Project/Area Number |
06J08674
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小石 かつら 大阪大学, 大学院文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | メンデルスゾーン / 演奏会 / 19世紀 / ドイツ:イギリス / ヨーロッパ / 音楽史 / 序曲 |
Research Abstract |
現在では演奏会の開始音楽として「演奏会用序曲」は一般的である。しかし、そもそもオペラの開始音楽であった「序曲」が、聴衆を惹き込むプロムナードとして「演奏会」のオープニングに用いられはじめ、次第にオペラを伴わない単独作品「演奏会用序曲」として作曲されるようになった経緯は、現在まで明らかにされていない。この「演奏会用序曲」の最初の代表的な作品は、1826年に作曲されたF.メンデルスゾーンの《真夏の夜の夢》op.21であるが、出版に際し、メンデルスゾーンは「演奏会用序曲」と新しいジャンル名を造語し明確に記した上、作品番号をも配した。これはメンデルスゾーンが「演奏会用序曲」をひとつの独立したジャンルと捉えていた証左である。本研究の目的は「演奏会用序曲」がメンデルスゾーンによって、独立したジャンルとして定義されていく過程を明らかにすることである。 本年度は、まず4月末に、学会誌『音楽学』に論文「Felix Mendelsssohn Bartholdy und seine musikalischen Tatigkeiten in London」を投稿した。これは、ロンドンでの演奏会用序曲の演奏を含む、メンデルスゾーンの演奏活動を詳細に調査したもので、査読の結果、第53巻1号に掲載が決定した。 続いて5月末から6月はじめ、ベルリン国立図書館音楽部門にて、当図書館所蔵の出版社宛て書簡と出版記録を用い、演奏会用序曲の受容について調査し、それまでの研究と合わせて、6月8日に研究成果をベルリン工科大学音楽学研究所にて発表した。この際、上記《真夏の夜の夢》の出版と同時に出版された演奏会用序曲第三番《静かな海と楽しい航海》が、出版に際して大幅に改訂されたことが明らかとなった。その改訂の内容を詳細に検討し、10月28日、日本音楽学会全国大会(九州大学)にて、研究成果を「演奏会用序曲《静かな海と楽しい航海》の成立史」として発表した。この発表にさらに検討を加え、12月には『阪大音楽学報』に投稿した。これについては現在査読中である。
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Research Products
(1 results)