2006 Fiscal Year Annual Research Report
「競争的」人事制度が女性就労と人材育成に与える影響に関する実証研究
Project/Area Number |
06J08700
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
井川 静恵 大阪大学, 大学院国際公共政策研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 人事制度 / 賃金制度 / 評価制度 / 生産性 / 年俸制 / 中小企業 / 成果主義 |
Research Abstract |
【研究の概要】 本研究の目的は、「競争的」人事処遇制度が働き方そのものに与える影響を、女性労働と人材育成、キャリア形成に着目して実証的に明らかにすることである。 具体的には、企業内人事マイクロデータによる実証的研究と、参与観察・インタビュー調査という質的研究の2つを用いて、これらの課題についてのインプリケーションを得ることを目的としている。 【本年度の研究】 ある企業(関西、社員数約60名の知的サービス業)を対象とした分析を行った。 本年度は上記研究目的の中でも、「人材育成・キャリア形成」について、特に「競争的」人事制度、すなわち対象企業でとられている「年俸制」などの「成果主義」との関連で分析を行った。 まず、研究計画どおり、1.人事処遇制度について、人事部資料および人事担当者への聞き取り調査から、対象企業の制度の特徴を明らかにした。次に、研究計画どおり、2.データを整理して分析可能な状態にし、記述統計量やグラフなどから、人員構成、賃金等に関する基礎的分析を行った。さらに、研究計画に記載したとおり、3.パネルデータの固定効果モデルの推定で賃金関数の推定を行った。この結果については、論文1本の形式に整えられた。 さらに、今後研究を発展させて、仕事の配分方法や担当職務の違いなどをみるための新たなデータの提供をお願いした。担当職務の一覧表の作成等、既に分析にも着手した。 本年度に行った研究によって得られた新たな知見は、「成果主義」という「競争的」な人事制度(賃金制度は「年俸制」)を採用している企業であるが、結果としての賃金実態(賃金の上がり方)は年功的賃金カーブであったということである。また、個人の生産性(個人別の獲得付加価値額)と賃金が必ずしも同じようなカーブを描かないということもデータの統計分析から明らかになった。労働経済学的インプリケーションは大きいといえよう。
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