2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
06J08864
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
江上 喜幸 Nagasaki University, 工学部, 助教
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Keywords | 計算物理 / 第一原理計算 / 電気伝導特性 |
Research Abstract |
本研究は、第一原理に基づく高精度電気伝導特性計算によりナノ構造体における電気伝導特性の予測、解析を行うことで、次世代デバイス開発に貢献することを目的としている。 今年度において、次世代デバイス材料として注目されているシリコンカーバイドの作製プロセスの初期構造であるC_2H_2分子が吸着したSi(001)表面について、STM像のシミュレーションを行った。具体的には、実験的なSTM観察において、幾何構造的に高い位置にあるC_2H_2分子像が低い位置にあるベアSiダイマーよりも暗く見えるという逆転現象を解明するために、トンネル電子がどのようなエネルギー準位や空間経路を介して伝導しているかという解析を行い、STM像が得られるメカニズムについて詳細に調べた。これにより、エネルギーバンド構造とSTSスペクトルの計算結果から、ベアSiダイマー上にSTM探針がある場合、ベアSiダイマーのπ-stateがトンネル電流に大きく寄与していることが分かった。これに対し、C_2H_2分子上に探針がある場合には、C_2H_2分子の吸着によってこのπ-stateが終端化され、またC_2H_2分子周りのstateがエネルギー的に低い位置にあるため、探針へ伝導するトンネル電流が大幅に減少し、実際の幾何構造と観察されるSTM像に逆転現象が生じるということが分かった。 以上の研究により、実験的に観察されている特異な電気伝導特性に対し、第一原理に基づく高精度計算を行い、その現象が起こるメカニズムについて解析を行うことで、デバイス開発に対する知見を示した。また、ナノ構造体における電気伝導特性を精度良く効率的に計算するための新たな手法として、Lippmann-Schwinger方程式を用いた第一原理電気伝導特性計算手法を独自に開発した。これにより、従来用いていた計算手法に比べ約30倍程度の高速化を実現した。
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Research Products
(4 results)