2006 Fiscal Year Annual Research Report
ナノサイズ系の電子相関現象における軌道自由度の物理
Project/Area Number |
06J08881
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
阪野 塁 大阪大学, 大学院工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナノサイズ系 / 電子相関 / 軌道自由度 / メゾスコピック / 近藤効果 |
Research Abstract |
本研究はナノサイズの系で様々に形成される電子状態の軌道自由度による物理の解明を目的とし、特に量子ドットでの電子相関現象軌道近藤効果による輸送特性の解析を行ってきた。近藤効果の取り扱い手法として、ベーテ仮説による厳密解を用いた絶対零度における解析と、非交差ダイヤグラム近似法による有限温度系における数値計算を用いることで、相補的かつ系統的に量子ドット系の輸送特性の解明を行ってきた。特に本年度の輸送特性の中でも単一量子ドット系の熱起電力に注目し研究を行ってきた。 厳密解を用いた熱起電力の解析では、フェルミ液体論を援用するにより、単一量子ドット系軌道近藤効果による低温での熱起電力の、ゲート電圧依存性と近藤領域における軌道分裂つまり印加された磁場についての依存性について明らかにした。また、同様に非交差ダイヤグラム近似法を用いることで近藤温度付近での熱起電力特性を研究した。特に有限クーロン斥力模型を用いることで、複数電子が複数の軌道中に存在するときに起こる軌道近藤効果による輸送特性に着目し、2軌道系の量子ドット準位操作による電荷数変化に近藤効果の変調や、3軌道3電子系の軌道分裂に起因した対称性変化による輸送特性の変調について解明した。 これらの解析は単一量子ドット系だけではなく量子ドット間にクーロン斥力が働く多重量子ドット系の近藤効果についても適用が可能である。上述の解析を応用し多重量子ドット系の近藤効果についての解析へと展開する。
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