Research Abstract |
本年度は以下の3つについて,研究を行った. 1.2チャネルマイクロホンアレイと回転による音源方向推定手法 小規模かつ高精度に音源方向推定が可能な手法が求められている.2つのマイクロホンを用いた手法が提案されているが,音源が2つのマイクロホンを通る直線をはさんで前後どちらにあるかを推定することができないという問題がある.そこで,本研究ではマイクロホンを取り付けた筐体の回転を利用することで,システム規模と演算量を大幅に増やすことなく,全方向の音源方向推定が可能となる手法を提案した. 2.頭部近傍における立体音像定位の向上に関する研究 我々の提案してきた立体音像定位手法では,距離の違いを全体のレベル差のみで表現しており,全体のレベル差以外の変化が生じる頭部近傍においては,音の距離感が再現できない.そこで,遠距離,および頭部近傍における音像定位の違いについて考察し,それらを従来の立体音像定位手法に適用することによって,メモリ量や演算量を大幅に増加させることなく,頭部近傍における立体音像定位を実現する手法を提案した. 3.立体音像の移動感の向上に関する研究 ゲームなどの分野においては,位置や距離の正確な再現よりも,移動感の明確さなど,強調された立体音響が要求される傾向にある.このような問題を解決するため,頭部伝達関数の再現により得たバイノーラル音声に対して,リバーブ効果など,付加的な要素技術を導入することで,仮想音像の移動感を向上する手法が実現されている.しかしながら,この手法は仮想音源の明瞭度が低下する,あるいは演算量が増えるといった問題点が存在する.そこで,立体音響に関するその他要素技術を追加することなく,移動感の向上を実現する手法が求められている.本研究では,頭部伝達関数の特性に補正を加え,移動感の向上に重要となる要因を強調して再現することで,移動感を向上する一手法を提案した。
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