2006 Fiscal Year Annual Research Report
テラヘルツ時間領域分光法を用いた生体高分子の立体構造のゆらぎと機能に関する研究
Project/Area Number |
06J09054
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 真理子 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | テラヘルツ時間領域分光法 / 生体高分子 / タンパク質 / 低振動数モード / 構造ゆらぎ |
Research Abstract |
平成18年度は、以下の3点 1.アラニン分子結晶の低振動数モードについての詳細な解析、 2.アラニンオリゴマー分子結晶の低振動数モードに対する水和効果に関する実験と考察、 3.ニワトリ卵白リゾチームのテラヘルツスペクトルに対する水和効果に関する実験と考察を行い、各項目について以下のような知見を得た。 1では、アラニン分子結晶における吸収バンドのバンド振動数及びバンド幅の温度変化を解析した結果、150K以下における低振動数モードの緩和はエネルギー緩和で説明できること、各モードに対応するポテンシャルの非調和性の大きさはモードに依存せずほぼ同じであることが分かった。 2では、アラニンオリゴマー分子結晶のテラヘルツ時間領域分光測定を行った結果、水和によってバンド振動数は高振動数側にシフトし、バンド幅は狭くなることを見出した。さらに吸収バンドの温度変化から、水和によるバンド幅の減少は不均一拡がりが減少したためであることが分かった。これらの実験結果から、アラニンオリゴマー分子結晶においては、水和水との水素結合によって低振動数モードの復元力が強化され、結晶の乱れが減少することが分かった。 3では、ニワトリ卵白リゾチームのテラヘルツ時間領域分光測定を行い、低温(^-10K)から常温までのテラヘルツスペクトルを取得した。ペレット状及び粉末状における測定の結果、定性的またある程度定量的な議論が可能なスペクトルが得られることを確認した。また得られたスペクトルを用いて、中性子散乱の動的構造因子に相当する物理量を導出し、中性子非弾性散乱スペクトルとの比較を行った。その結果、テラヘルツ時間領域分光法によって中性子非弾性散乱スペクトルと非常によく似たスペクトルが得られることを明らかにした。
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Research Products
(2 results)